OASIS

天国の日々のOASISのレビュー・感想・評価

天国の日々(1978年製作の映画)
3.7
第一次世界大戦の開戦直後、貧しい生活から逃げ出してきた兄とその恋人、妹の三人。兄は麦刈り人として雇われるが、農場主が兄の恋人に一目惚れしてしまうという話。

豊穣の大地で実り育つ一面の麦畑に、いわゆるマジックアワーにこだわった撮影が被さり、淡い光に包まれた人々が黙々と作業をする寂しげな姿を映し出します。
実にテレンス・マリック監督らしさが出た映画でした。

崖っぷちな人生を逆転しようと、妹だと偽り愛する恋人を病弱で命短い農場主に差し出す主人公。
すぐに二人は結婚し、裕福で満ち足りた「天国の日々」を過ごすが、実は兄妹では無いという秘密が暴露てしまう。
たとえ貧しくても、人を騙す事や真実の愛を偽るような真似はしてはならないといった事を描いているのかなと思いました。
大量発生したイナゴが報いの様に全てを食い尽くして行くシーンや麦畑か業火で燃え盛る様子も、どこか地獄の様な絵図を再現しているみたいで。

語り部である妹の目線を象徴するカメラワークや農場主を演じたサム・シェパードの厳つく愛に飢えた演技は素晴らしかったですが、リチャード・ギア演じる主人公は軽薄な青年に見えて然程悲壮感は感じられませんでした。

幸せを求めるがゆえ視界が曇り、美しい夕暮れには目もくれず必死に貧困から抜け出そうともがく姿が映像とは裏腹の哀しさを感じさせる映画でした。
OASIS

OASIS