【第53回カンヌ映画祭 審査員賞】
イランの女性監督サミラ・マフマルバフ監督作品。同じく映画監督である父モフセン・マフマルバフの映画学校で学び、17歳の処女長編『りんご』がいきなりカンヌ映画祭ある視点部門に選出、本作ではコンペに出品され審査員賞を獲得した。
ちなみに妹のハナも映画監督で、『子供の情景』が東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞している。
20歳にして既に作風や演出法が確立されている。リアリズムタッチで紡いでいく物語にユーモアを少々。
冒頭ブラックボード=黒板を背負って歩く流しの教師たちの異様な光景から掴みは抜群。主に二人の教師の運命を追っていく。
一方は闇物資を運ぶ子供たちに、もう一方は故郷イラクへ帰るクルド人たちと奇妙な関係を築きながら思いもよらない事態に巻き込まれてゆく。
緩急のつけ方が抜群に上手く、山場を数回つくりつつラストの銃撃シーンをクライマックスに持ってくる。ラストのもやの中での離婚の儀式もなかなかシュールで寓話的でよかった。
ちなみに『亀も空を飛ぶ』『ペルシャ猫を誰も知らない』の映画監督バフマン・ゴバディも俳優として出演している。
85分と短いながらイラン、イラク間の緊張や学習環境の乏しさ、勉強することへの拒否反応など社会問題も垣間見えてとても上手い。作劇としても完璧で、誰にでもオススメできる秀作。