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モンスターズクラブのsuのレビュー・感想・評価

モンスターズクラブ(2011年製作の映画)
3.8
この社会で生きにくさを感じる人に、やさしく寄り添ってくれる作品。

詩のような長いセリフが特徴的だった。監督の豊田利晃さんの作品に関しては、舞台、怪獣の教えを見ても思ったけど、哲学的なセリフを劇中に織り交ぜるのが特徴的な方だと感じた。本作にもそれが存分に生きていた。映画というよりもひとつの叙事詩を映像として見たような感覚になった。

序盤の突き刺すように辛辣かつ痛烈な社会批判的抒情詩は、耳が痛いほどに本質を突いていて、社会に対する嫌悪感を否が応にも喚起させられた。それほどに硬く、冷たい言葉だった。その言葉の化身のような良一の生活。社会のシステムを大きく担う組織や権力に対して、爆弾を送りつける。でも、幽霊か幻影か、良一の前に現れる兄達、とくにユキとの対話で良一は気がつくのだ。

終盤の良一とミカナの電話のやりとりのシーンは、何度みても良い。
「もし、ユキがここではない別の世界を信じていられたら、自分の望む世界を見つけることができていたら、自殺なんてしなくて済んだんだよ。そこが怪物が住む森でも、それなりに楽しく生きることができたんだよ。おれは見つけた。だからお前も見つけられるはずだよ。絶対あきらめるな。投げ出すんじゃないぞ。お前はここにいろ。ずっとここにいるんだぞ。」

死のうとしたり、生き辛さを感じるひとは、きっと森からはなれなくちゃいけないと思うのだろう。大切なのは、離れて逃げることじゃなくて、自分の望む世界を見つけること。逃げなくても大丈夫だっていう安心感を知ることが何より大切なのではないかなと。

生きることに絶望した人、会社や組織で生きることに疲弊しきった人達に、相当に力強いメッセージをくれる作品。

後半の打ち上げ感がたまらないので、ぜひおすすめ。
元気がない時ほど、勇気をもらえる作品ではないかなと。

自分の望む世界をみつけること。そうすれば、怪物が住む森でも、それなりに楽しく生きることができる。
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