めしいらず

哀愁のめしいらずのレビュー・感想・評価

哀愁(1940年製作の映画)
2.6
出征前の将校と踊り子の恋。逢えるのは今日が最後かも知れない。そう思うから一日で燃え上がる。そして出征。戦死の誤報。女は困窮し、絶望し、生きるために望まぬ方へ進むよりほかなかった。嬉しい筈の帰還。でも女の心は隠し事にずっと曇ったまま。知らせずには進めない。でもどうしても知られたくなくて結婚直前に姿を消す。彼女は正直で、あまりに頑なだった。愛するがゆえに女は不幸を背負う。
小津安二郎の「風の中の牝鶏」を思い出す。あちらはこの逆に、告げたことで不幸に堕ちていく夫婦の顛末(最後に救いがあるが)が描かれていた。だから本作のヒロインが告白できなかった気持ちも理解できる。どちらに転んでも不幸であるのなら、せめて清らかな記憶をとどめたままでいたいと。唯一告げた義母への念押しが不憫だ。どうあれこういう不幸の形も生まれるのが戦争なのだろう。
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