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ミスタア・ロバーツのtakのレビュー・感想・評価

ミスタア・ロバーツ(1955年製作の映画)
3.7
映画雑誌ロードショー1980年12月号の付録だった冊子「名作映画ダイジェスト250」は、中坊の頃から僕の映画生活の一つのガイドだった。少年はその250本を全部制覇してやるぜ!と考えた。されど。ソフト化もリバイバルもなく鑑賞困難な作品も含まれる。それからウン十年。数えたらあと30本くらい。配信で片付けられそうなのもあるし、死ぬまでに制覇してやるかとぞ思ふ。もちろんそれだけが名作じゃないけど。
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さて。その個人的プロジェクトの一環で今回観たのが本作「ミスタア・ロバーツ」。中坊の頃に一度だけテレビで放送されていた記憶はあるのだが、艦長が大事にしているヤシの木を海に投げ捨てる場面しか記憶がない。多分全編観ていないのだろう。

第二次大戦も終結に近づいていた頃のアメリカ軍の貨物船を舞台にした戦争コメディ。

今の年齢で観て正解だった。年度変わりごとに、自分が活躍できる現場や仕事ってどこなのか?今のままでいいのか?なーんて、あれこれ考えたことがあった今だから、主人公ロバーツ中尉の執拗な転属希望の手紙のエピソードもわからくはない。また、中間管理職として上下関係の間に挟まれる姿も、近頃立場が変わった自分としては考えさせられてしまう。人望って誰でもあるもんじゃない。ロバーツを演ずるヘンリー・フォンダの姿を見て考えさせられる。

頑なな艦長が長い間上陸許可をしないことに腹を立てて、ロバーツは直談判。艦長から「転属希望の手紙を以後出さないことを条件に、全員に上陸許可を出す」と切り出されて、部下のために受け入れてしまうエピソード、そしてその真相が船の全員に明かされる場面はなかなかグッとくる。

コメディ要素は若きジャック・レモン。早口で捲し立て、泡まみれで面白がらせてくれる。彼の成長物語が、湿っぽくなるラストを心地よく救ってくれる。しかしながら、"支配者が幸せを脅かすなら抵抗することができる"という市民革命の縮図のようなムードがある中で、ジャック・レモンが孤軍奮闘している印象もある。だって、アメリカの良心の象徴のようなヘンリー・フォンダが相手なんだもん。軍医のウィリアム・パウエルと3人で偽物のスコッチウィスキーを作る場面は、それぞれの持ち味が生かされた場面で面白かった。
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