jonajona

ダークナイトのjonajonaのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
5.0
『ジョーカー』のホアキンフェニックスの怪演も最高にすばらしかったけども、
このジョーカーも別ベクトルで素晴らしい。中高生の頃にこちらを見たので正直かなりこのジョーカーのインパクトは忘れがたい。

ホアキンジョーカーは、ある種の人たちの苦しみの代弁者という側面もあり、だからこそのカリスマ的存在感でストーリーラインが完全に『キングオブコメディ』だったのも下から上への突き上げを描く構成が念頭にあっての事だろうと。虐げられた者から悪の権化へと成長を遂げるディストピア的英雄譚になってるのが魅力。
対してヒースレジャー版ジョーカーは自分の背景を全く見せない。同情の余地のある過去を語ったかと思えば、次に語る時には全く別の過去を語り彼の全てが法螺話であることがわかる(あるいはどれか真実なのかも)。ホアキン版の『断絶までの橋渡し』を放棄したあとの状態、ハナから他者の全てを拒絶した、この世のアウトロー。まさに『ジョーカー』。彼は欺瞞を許さない。突き抜ける悪はヒーロー的にもなり得るのは、ある意味当たり前で、ヒーローがいる所に必ず画面外に『救いこぼされた存在』がいるからだろう。物語のロジックの中で卑屈で内気で消極的な奴は救われない。悪人として登場できれば御の字で、そんな奴らには『誰も共感しえない』から描かない。そんな画面外から現れるのが彼らジョーカーなのだと思う。彼はバットマンの倫理観をことごとく揺さぶり、むしろ愛にすら見える執着を見せる。そこが可愛らしいところ。懐疑心が誰より強く求めているものが信仰だなんて、なんとも皮肉な話じゃないか。

感化された自分と同じ年くらいの大人が京王線で事件を起こしたあれは凄いショックでした。なんか悲しくなった。自分の生活も散々だけど映画はそういうためのものじゃないよ。
jonajona

jonajona