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ドランク・モンキー/酔拳の教授のレビュー・感想・評価

ドランク・モンキー/酔拳(1978年製作の映画)
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カンフー映画の傑作…と言われている本作。子供の頃から親しんできたジャッキー・チェン。監督はユエン・ウーピン。
まだ映画のことをまるで知らずに無邪気に楽しんでいた頃の思い出としてはちゃんと血肉になっているのだが、今観直してみると、頭を抱えてしまう。

まず物語は一直線のご都合主義。
何よりフェイ・フォン(ジャッキー・チェン)の素行の悪さたるや。
映画を観る上でのPC的な倫理観の発動には自重したいと昨今思うのだが(時代がこんな風にホワイトになり過ぎると息苦しさしかないので)、とにかく粗暴。

道場主の跡継ぎ息子を鼻にかけ、自分より弱い者を見下し(今で言う)セクハラにも躊躇がない。
…それは言葉を選ぶが時代柄しょうがない。
ただその粗暴さへの感情移入の問題はどうでもよく、単純に物語の論点のなさがなかなか酷い。
序盤のエピソードに関しては、どのような理屈で物事が正当化されるのか、まったく腑に落ちない。

加えて、カンフーアクションももちろん技のキレやアクロバティックな動きは天才的だが、引きの絵で捉えているのみで鈍重さが目立つ。
むしろ後年の自身で監督を手掛けるジャッキーの方が「映画」として巧みにも感じた。

しかし。それは「演出」だったというのとが判明する後半で総毛立ってしまった。
少なくともストーリーは相変わらず雑なのだが、秘技としての「酔拳」を習得してからの身体つきの変化。
冒頭で披露した蛇拳などのフェイが習得していた武術の型から、さらに発展した「酔八仙」の「型」の見事さ。
ジャッキーの「演技者」としての巧さや、武闘家、あるいは京劇を学んだダンサブルな動きに、まだまだあどけない中に壮絶な訓練と努力の跡が窺え感動した。

アジアが誇る世界のスーパースターという貫禄をまざまざと見せつけられて、最初に述べた「傑作」の意味を初めて理解できた。
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