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サムライのarchのレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.0
デヴィッド・フィンチャーの『ザ・キラー』に明らかに影響を与えていて、確かマイケル・ファスベンダーが本作をちょうどオファー前に観ていたという話らしい作品。

サムライというタイトルは、その武士道精神のことを指しているのだが、正直そこには大した意味づけを感じさせない、というか言っちゃえばハードボイルドなわけである。

破滅的で退廃的な世界観をアラン・ドロンの虚ろな目とルックのコントロールによって完璧に構築していた。細部のスパイ仕草や逃亡シークエンスも正直狙っているクールさ、スタイリッシュさに奇しくも「ボケ」感が付与されているようで、ただそれだからこそ良かったとは私は思う。
『ザ・キラー』はこの作品を踏まえて、そこの部分も最初から狙い通りなのかなぁと思った次第。

列車の使い方が見事なのだが、いわゆる映画史的な文脈と照らし合わせても地下鉄を利用するというのが如何にもノワール的で素晴らしい。


感情の初ろの乏しい主人公コステロ。彼はその仕事が原因で、遂に死んでしまう訳だが、厭世的な価値観と「生きよう」とする行動原理の拮抗があるように思えた。つまりは「死に場所」を探す仕草とでも言うべき、それが魅力的なのだろう。
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