arch

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家のarchのレビュー・感想・評価

4.0
2Dで鑑賞 パンフレット読むと3D必須の作品であることに気づいたので、多分また見に行きます…

45年生まれのヴィム・ヴェンダースとアンゼルム・キーファーのシンパシーによって生み出されたドキュメンタリー(?)。
アンゼルムの個人史を描くというよりも、とにかくアンゼルムの手がけた作品群を"ヴィム・ヴェンダース"を介して探訪するような体験を提供することに徹しているようだ。


素晴らしいのはこの映画のアートを空間で捉えていること。
一つ一つのアートをアトリエという空間の中の一部として描いていく。そもそもアンゼルムの作品が絵の具以外の物質を利用した立体的であるという特徴を備えていることあるだろうが、それ以上にそれらのアートを"空間"のなかにあるものとして捉えることが、何より映画的な表現に昇華する方法だと理解しているからなのだろう。
つまりそれは絵画や写真、そういった二次元的な視覚表現を映画的であるパンショットやドリーショットで映していくことで、それぞれが一つの《ショット》に見たてられていく。アンゼルムが作り出した断片的な《ショット》の数々を繋げていき、一つの《シーン》を構築していくのだ。緩やかなカメラの動き、特に印象的なパンショットの数々は、アンゼルムの芸術的世界への導入としての役割もあり、静かにより深くへと誘われていくような体験になっている。
またその《ショット》と《ショット》を緩やかなカメラの動きで繋ぐ行為は、時間感覚をも狂わせる。まるでフィルムのフレーム間の時間が引き伸ばされるような感覚というか、限りなく止まっているような時間感覚にされる。加えてアンゼルムの少年期と青年期なフィクションパートが挟まれ、より時間は確固たる流れを失い、解体される。
見事にアンゼルムの作品は《映画》になっているのだ。




ラストショットなんかはちょっとヴィム・ヴェンダースのエゴ出てない?やりすぎじゃない?な感じもするが、アンゼルムとヴィム・ヴェンダースの共通項としての「翼」ということなのだろうか。
arch

arch