ダイナ

サムライのダイナのレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.2
窓から覗く土砂降り、ベッドに寝そべりながら煙草を燻らせる主人公を映す導入のクールさ、アラン・ドロン演じる主人公ジェフ・コステロのトレンチコートとハット着用のルックの完成度の高さだけで白米3杯いけちゃいますな魅力の暴力。ストーリーはシンプルなもので、殺し屋の主人公が綿密な工作を仕掛け依頼遂行するも第三者に目撃されてしまうわけですが、その突発的事故が想定を外れた展開へ主人公を誘うというもの。

主人公の希薄なバックボーンは観客を作中の事件だけに集中させ、その他要素を想像の余地に任せます。自分なんかは「この人物はジェフとこれまでどういう関係を築いてきたのだろう」という点が気になっていまして、これを説明不足と呼ぶか語らない配慮と取るか、個人的には後者。静寂なトーンの本作で個人的に好きなのは依頼人との邂逅シーンの緊張感とカメラワーク。夜のしじまに思案する大人達に鋭く研ぎ澄まされたカタナのようなあいつの言葉…、と派手さ無くとも充分と示してくる硬派なノワール作品。

改めて考えてみると日本人ではあるものの刀を握ったこともなくそもそも時代が違うもんで、武士道精神なるものの定義すらはっきりと理解していない自分。主君に尽くし義に尽くすという綺麗な部分だけ思い浮かべるものの本作が描いているのはそのようなものではないような気がします。監督がイメージする「サムライ」とは、なぜこのタイトルなのか。冒頭の文言を引用すると「サムライはとことん孤独(超省略)」ということで、監督が侍をどう捉えているかから突き詰める必要がありますが、「孤独」というとっつきやすいポイントを軸にジェフの行動を見つめてみると、冒頭で推したルックの完成度に止まらず、些細な行動に始まり、思考や動機にも完成度の高さというかブレない確立した美しさみたいなものを感じます。
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