透明化の研究をしている天才チームのストーリーが始まりゴリラが可視化していくVFXで一気に引き込む。
ケビン・ベーコン演じるセバスチャンの変人っぷりを見せ後半への伏線を敷きつつも、透明人間になったらというifを見事に表現したまるで中学生男子のような思いつきが観客を巧みに油断させる。
この作品はこういう映画なのか!と思えるほどに気合いの入った透明人間による女性への妄想の具現化の描写が見事。
透明人間になる弊害として脳に影響を及ぼすだとか、モルモットのような実験体になってしまったことによるストレスからなのかの心理描写に関しては鮮やかにバッサリ切り捨てる。
今作の見どころ、いやヴァーホーベン先生が今作で目指したことはおそらく透明人間を映像上に映し出すことに終始している。
液体、気体、サーモグラフィーなど、これでもかと多種多様な表現方法を巧みに用い、如何にして映像で魅せるかを主として作り上げているように感じる。
それほど、ストーリーやキャラクターの感情表現は上の空、という潔さがさすがヴァーホーベン先生!
前半の「アホか」と脱力する空気感から突如一変する後半の怒涛の展開は、ヴァーホーベン先生という天賦の才を持つ策士のドヤ顔がチラチラと浮かぶほど度肝抜かれた。
人間の欲望をフィルターゼロ、見た目そのまま丸裸でストレートに表現し、映画のテイストとしてベクトルを真逆に振り切るような舵取りはなかなか類を見ない。
観客に「あー、その気持ちわかるわー」と自らの欲望に苦笑してしまうかのように感情移入させておきながらの、主役の立場逆転、目線交代の誘導は鮮やか過ぎて戸惑いを隠しきれない。
この物語に人間の悲哀などの深みはありそうで存在しない。
あるのはただただ「ほれー!このVFX凄くね?人間の突き詰めた欲望って、これしかないだろ?ほらほらー!」というヴァーホーベン先生のドヤ顔と鼻息しかない。
あ、あとエリザベス・シューのエロ可愛さ。か、可愛い。