シンタロー

風花のシンタローのレビュー・感想・評価

風花(1959年製作の映画)
3.9
木下惠介監督×岸恵子主演作品。大地主名倉家の長男の娘・さくらが嫁いでいく。見送る春子は、姿の見えなかった息子・捨雄が川に飛び込もうとするのを必死で引き止める…。19年前、小作人の娘・春子が、名倉家の次男・英雄と心中を図ろうとしたのもこの川だった。英雄の子を身籠っていた春子だけが生き残り、追いつめられた春子の父は首を吊る。失意の春子は、下僕・弥吉の口添えで名倉家に引き取られ出産。息子は勝手に捨雄と名づけられ、迫害を受ける日々の中、さくらだけは親子に優しく接してくれた…。
親子二代に渡る身分違いの切ない想い。過去と現在がフラッシュバックしながら描かれ、当時の演出としてはなかなか前衛的だと思います。長野盆地と信濃川のロケーションが美しく、様々な場面で印象的に活かされてます。報われない想いを通じて、母と息子の親子愛、それぞれの再生へ引き寄せていくのが素晴らしかったです。
あふれる想い「二人だけしか知らない、一番楽しかった秘密…いつまでも忘れない」切なくてジーンとくる名場面。告白「お前の父さんと死んでから二度と生きてやしなかったよ…もぬけの殻…でなきゃあんな辛い家、生きてこれやしなかったよ」母の心はあの時すでに死んでいた。悲し過ぎる。"風花"「晴れた日にどこからか風に乗って舞ってくる、こんな雪のことなんだよ。何だか幸先がいいじゃないか…さぁ行こう」共に川を渡ろう!この親子には幸せになってもらいたいです。
"にんじんくらぶ"(五社協定に縛られない作品作りを実現するために岸恵子、久我美子、有馬稲子の3人で結成したプロダクション)が初めて3人揃って共演が話題になりました。ヒロイン役の岸恵子は17歳から36歳まで熱演。申し訳ないけど、個人的にこの人の声と芝居はあまり好みではないです。どんなに貧しい役や汚れ役をやっても品の良さが滲み出てしまって。ただ凛とした美しさとはこの方のことではないかと…気高さが伝わってきて素敵です。様々な衣装とロマンスパートで見せ場が多い久我美子。カラーだとより中性的な顔立ちが映えます。育ちの良い感じがこの役にピッタリ。声と喋り方が好きです。久我と共に制服姿まで披露する有馬稲子。出番は少ないけど、後半再登場でのヤサグレ感が凄い。顔つき、口調まで変わって、上から目線の嫌味たっぷりな台詞回しには参りました。配列は4番手ですが、実質準主役の川津祐介。素朴で垢抜けない感じがこの役には合ってますが、芝居はあまり上手だとは思いません。綺麗な目の色と、ぽってりした唇は魅力的で、木下監督のお気に入りでしたネ。俳優座の東山千栄子と永田靖が強烈な芝居で毒を発揮していて素晴らしかったです。
シンタロー

シンタロー