・アメリカのコミックが原作になっており、原作者のダニエル・クロウズが脚本も務める。
・主人公の名前「Enid Coleslaw(イーニド・コールスロー)」は原作者「Daniel Clowes」のアナグラムになっており、主人公は作者自身の投影である。
・このコミックは「オルタナティブ・コミック」と呼ばれるジャンルの皮切りになったものである。オルタナティブコミックは、これまでアメリカンコミックの主流であったスーパーヒーローものやファンタジー、ポジティブなイメージと一線を隠し、日常を切り取ったシニカルな内容のものだった。
・テリーズワィコフ監督の劇映画としては一作目であり、それ以前は「クラム」というこちらもオフタナティブコミックの作家、ロバート・クラムを取り上げたドキュメンタリー映画であった。
・原作のコミックにスティーブ・ブシェミをモデルにした男性が描かれているため、ブシェミがそのまま出演することになったという。
・ブシェミは古いブルースレコードのコレクターとして登場するが、これはズワィコフ監督自身を投影しており、ズワィコフとロバート・クラムの出会いもお互いの趣味であるレコードを通じてであった。つまり、レコードは世間とは解離するような趣味だが、それ自体が彼らの世界を広げたというものの象徴である。
・最後にイーニドは老人と同じ謎のバスに乗って去ってしまうため、これは自殺を暗喩しているのではと論争を読んだが、作者のダニエルクロウズ自身は、とにかくバスに乗って他の街へ出ていく、という自身の経験を反映したものだと話しており、自殺説を否定した。
・映画の中でタイトルの「Ghost World」については触れないが、原作の漫画では「Ghost World」と街の中に落書きし続ける男が登場する。ただし、主人公が男を呼び止めても理由を明らかにしないので、漫画の中でもその意味は明確にされていない。
・しかし「Ghost World」はイングバール・ベルイマン監督の「第七の封印」から引用されたと考えられている。「第七の封印」では、主人公が世界の人々を見下げることばかりして、現実から距離を取りすぎたため、この世界が何も意味をなさない「Ghost World」になってしまったと告解するシーンがある。この告解とイーニドを重ね合わせてこのタイトルになったのではないかと考えられる。