MASH

キング・コングのMASHのレビュー・感想・評価

キング・コング(1933年製作の映画)
5.0
アメリカ映画のシンボルといっても過言ではないだろうキング・コング。その原点である作品。観る前はもちろん期待はしていたものの、正直1933年と今から80年以上も前の作品なので、安っぽさや古臭い部分は温かい目で観るつもりであった。しかし、この映画のいざ観始めると一気にその世界観に引き込まれ、その完璧さにひれ伏すことになってしまった。それほどまでに完璧だったのだ。80年以上経った今でも名作として輝き続けるのには理由があるというわけだ。

もちろんその素晴らしい特撮に触れないわけにはいかない。これがなかったら日本の特撮や『ジュラシック・パーク』などは生まれなかったであろう。当時の特撮技術とストップモーション・アニメによる映像には本当に驚かされる。時代を考慮しなくとも完成度が異常に高いのだ。正直どうやって撮っているのかが分からないシーンすらあった。現代の映画はCGが多く使われ、実際にはないものを描くことができるようにはなった。しかし、やはりこういう実際の画面の中に"いる"という感覚を味わせてくれる映画の方がより"映画"らしく思える。

しかし、それだけではない。この映画はストーリーの持って行き方やキャラクター、そしてその構図に至るまで全てが完璧なのだ。ストーリーはというと、映画を撮りにきた人々がコングのいる未知の島に踏み込んで行くというものなのだが、この描き方こそがこの映画最大のポイントなのだと思う。キャラクターたちはコングの存在を知っていてそれを期待して島へと乗り込む訳なのだが、その不安と期待が入り混じった彼らの心情と観客の感情がシンクロするのだ。観客もキャラと同様にコングの存在を知っていて観に来るわけだが、実際にはまだ観ていない。いつ現れるのかという観客の期待と不安を煽りに煽っていく。そしていざコングが現れると、彼らと同じように恐怖に震え上がってしまうのだ。

だが、後半からはコングは畏怖の対象ではなくなっていき、無理やり島から連れ出され見世物にされる。それと同時に観客もコングに対してどこか同情し始めるのだ。文明という名のもとに好き勝手やるだけやって、自ら混乱に踏み入る。そしてそれらの全ての責任を他へ擦りつけててしまう。果たしてそれを"文明"と呼べるのか。この映画からはそういう現代社会への警鐘とも見て取れる。

物語的には"美女と野獣"をテーマにしているのだろうが、意外とそういう部分は薄味である。コングからのアプローチはあっても、アン自身はコングに対して恐怖しか抱いていないからだ。だが、それ以上に未知の世界へ踏み込む緊張感と興奮、巨大な生物の数々、そして現代の文明に対しての警鐘といった点で卓越しているのだ。

キング・コングは言わばただのでかいゴリラな訳で、お世辞にも工夫を凝らした怪獣とは言えない。しかし、製作陣の最大限の技術と労力によってキング・コングに命が吹き込まれ、80年経った今でも素晴らしいと思えるような作品となったのだ。これを観れば何故キング・コングが怪獣界の頂点に君臨し続けているかは一目瞭然だろう。
MASH

MASH