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迷宮物語のMASHのレビュー・感想・評価

迷宮物語(1987年製作の映画)
4.5
3つの短編からなるオムニバス映画。眉村卓の小説の映画化、のはずだったがどうやら各監督が好き勝手作ったらしい。結果としてとても万人受けするアニメとは言えない、摩訶不思議な映画となっている。だが、不思議と心惹かれてならない。アニメ作品の持つ可能性をすごい密度で詰め込んだ作品。

各作品の感想を個別に記載。

・ラビリンス*ラビリントス 4/5
『銀河鉄道999』で有名なりんたろう監督作品。ある少女が飼い猫と共に不思議なサーカスへと導かれる、というお話。
正直これを最初に持ってくるのは、観客をふるいにかけているとしか思えない。ストーリーと呼べるものはなく、映像にもほとんど連続性がない。ただ不気味なアニメーションが目の前を通り過ぎていく。だが、まるで意味不明というわけでもなく、子供の頃に夕方の町を1人で歩いたときのような不安感と好奇心が呼び起こされるようだ。観賞というより体験に近い、そんなアニメ作品。

・走る男 4.5/5
個人的にはこれが一番好き。川尻義昭監督作品。舞台は近未来。命をかけてカーレースに挑むレーサー、ザック・ヒュー。彼の狂気と運命を、ある雑誌記者が語る。
これが過去なのか現在なのか未来なのか、誰の視点なのか、現実なのか夢なのか、それすらも定かでない状態。車の各部が悲鳴を上げ壊れゆく中、体を震わせハンドルを握り、血走った目でただ走り続ける。言葉はなくともその表情だけで、彼が陥ってしまった狂気の世界を見せてくれる。超能力(?)による破壊描写も見所。ラストでザック・ヒューが見たものとは一体…

・工事中止 4/5
僕の大好きな大友克洋監督作品。ロボットのみで進む大規模工事に中止を言い渡すべく、サラリーマンの主人公が単独で現場に踏み込む、というお話。
大友克洋といえば『AKIRA』や『童夢』だが、彼の短編を読むと非常にブラックユーモアに溢れた作品が多い。この作品は比較的原作に準じているようだが、やはりそういった要素が効いてる。日本人の社畜気質をユーモラスながらエッジを効かせて描く。これは『MEMORIES』の「最臭兵器」にも通じるところがある気がする。ラストシーンも馬鹿げてるがゾッともする。責任者を排除してまで工事を進めるロボットたち、一方で会社の命令なら命をかけてでも仕事を遂行しようとする主人公。どっちがロボットなんだか…。
細やかで滑らか、実写映画的な演出が盛り込まれたアニメーションのクオリティは流石という所。大友克洋ファンなら必見の作品。
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