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猿の惑星:創世記(ジェネシス)のMASHのレビュー・感想・評価

4.0
僕の「猿の惑星」との出会いはこの作品。当時も楽しめたが、『猿の惑星』から『最後の猿の惑星』のオリジナル5作品を観た後だとまた違う楽しみ方ができた。オリジナルからのストーリーやキャラの膨らませ方、CGやモーションキャプチャーといった新しい技術の活用など、リブートというにふさわしい作品と言える。

今作では一応『猿の惑星』の前日章として描かれている。『猿の惑星・征服』と『最後の猿の惑星』で主人公だったシーザーが再びメインに。ただし舞台は現代となり、シーザーの出生も大幅に変更。個人的にはこの辺はオリジナルの方が好きだが、オリジナルとの比較で楽しめたりもする。

前半は正直言うとかったるい。アルツハイマー病の治療薬から始まったと言うストーリーは現実味があって面白いが、メインキャラがつまらない。ジェームズ・フランコが特に残念。彼の特徴でもあるにやけ顔が、真面目な科学者というキャラと乖離している。本人もそれを自覚しているのか、演技も中途半端で、彼の俳優としての実力の高さを知っていると尚更そう感じる。アルツハイマーを患った父親の表現も深刻さが足りないし、恋人との関係はおまけレベル。

だが、前半から圧倒的な存在感を放つキャラがいる。もちろんシーザーだ。セリフのない彼がこの映画の全て。特にシーザーを捉えるモーションキャプチャーの出来は、今の映画と比べても頭ひとつ抜けている。アンディ・サーキスの実力と合間って、シーザーの知的さとカリスマ性、混乱と怒り、そういったものが動きと表情で全て伝わるのだ。シーザーが中心のシーンは全て引き込まれるほど。

そして僕が何よりこの映画で気に入ったのは、リブート作品としてのオリジナル版からのジャンルの変化だ。オリジナルはSF要素と風刺要素が強く、『トワイライト・ゾーン』のような作風だった。一方で今作は完全にアクション映画に振り切っている。大量の猿たちが都市でクーデターを起こす様は、アクションとしての出来もそうだが、シーザーと猿たちの革命という点で一種のカタルシスを覚えるのだ。エンディングの続編への繋ぎ方も露骨ながら、まさにアクション巨編の序章を観たという満足感と次作への期待感に満たされる。

リブート作品が溢れかえるここ10数年。駄作から傑作までピンキリだが、今作はその中でも特別光るものを感じる。オリジナルでは重視されていなかった要素を全面に押し出してこそ、リブートの価値があるというもの。一方で、ちゃんとオリジナルの「人間の過ち」という根っこの要素は受け継がれているのもグッド。映画として完璧ではないが、まさに"再始動"と呼ぶにふさわしい作品だ。

2回目 4点
(2024年4月13日 Disney+)

1回目 4点
(2016年12月20日)
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