ゆみゆみ

スワロウテイルのゆみゆみのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
4.3
これはスゴイ。
架空の日本、流民の街になったイェンタウン。移民のルツボ。全編に渡り、主に英語、中国語、たまに日本語という日本映画じゃないのではと錯覚させるほど、出演者の発音のいいこと。

母を亡くし名前もない少女(伊藤歩)は、イェンタウンで移民のグリコ(CHARA)に出会いアゲハと名付けられ、共に暮らし始める。同じく上海からの移民のフェイホン(三上博史)、「アオゾラ」の店主ラン(渡部篤郎)、イェンタウンを仕切るリャンキ(江口洋介)、ランと活動を共にするシェンメイ(山口智子)、グリコと同じく娼婦のレイコ(大塚寧々)、雑誌記者(桃井かおり)、3秒だけ映るライブハウスの客(浅野忠信)など、今となっては贅沢なキャスティング。

マッドマックスのような荒廃した世界観でもあり、実際にパラレルワールドとして存在しているかのようにリアルな雰囲気もあり、夢のようでもあり、とにかく不思議と入り込めた。

アゲハ、グリコ、フェイホン、それぞれに焦点が当たり、誰が主役というわけでもないような漠然としたストーリー構成だったけど、どれもに深く感情移入することもなく、客観的に観る面白さがあった。

CHARAが思いの外良かった。この時16歳の伊藤歩のつかみどころのない雰囲気もとても良かったし、江口洋介の長髪があんちゃんに見えないほど役に入っててこれも良し。でも一番は私は三上博史。英語、中国語を使い若く美しい佇まいに惚れ惚れした。

ただ一番インパクトがあったのが組員の須藤(塩見三省)。一瞬なんだけど、ものすごいインパクトで思い出すのは彼の場面。

それから音楽が小林武史だけあって、My Little Loverの曲が雑音のように流れたり。それが架空の世界と現実とを交錯させる。

それと美術監督にヘイトフルエイトでも活躍した種田陽平。イェンタウンの雑多で陰鬱な空気とケバケバしいネオンなど、絵の洗練された作品だと思った。

生死が流れでそうなるように決着する、あっさりしたスピード感と、微かな爽快感と、なんともいえない後味の不思議な作品。観て良かった!
ゆみゆみ

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