Tラモーン

ハンバーガー・ヒルのTラモーンのレビュー・感想・評価

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
4.0
個人的ベトナム戦争シリーズ4作目🪖

ここまで観てきた『フルメタル・ジャケット』『地獄の黙示録』『プラトーン』と比べてとても地味で淡々とした作品。このドラマチックとは程遠い作品もまた、ベトナム戦争のリアルなのだろう。

序盤は兵士たちのベトナムでの日常をダラダラと描く。泥まみれの雑用をこなし、ベトナム人女性と戯れ、仲間たちと酒を飲み歌い、喧嘩をする。出撃命令がなければそんな風に日々が過ぎていく。

しかし、安全と思われた陣地内ですら北ベトナム軍やベトコンの襲撃により脅かされる。ヘラヘラと笑っている日々でも、常に死と隣り合わせの戦場なのだ。

そして下った出撃命令。アシャウ渓谷の丘を制圧するため、北ベトナム軍が塹壕を張る斜面をひたすら登っては戦い、戦っては登り、休戦してはまた戦ってを繰り返す。

何が正解なのかわからないまま、命令に従い丘を登り戦う兵士たち。ベトコンではなく訓練された北ベトナム軍の機関銃や手榴弾、足を取られる雨でぬかるんだ斜面、そしてあろうことか味方のヘリコプターの機関銃の誤射撃…。ありとあらゆる逆境が彼らを襲う。

ひとり、またひとりと仲間たちが死んでいく。10日にも渡った苛烈な戦いは大変な損害を出し、丘の上は死屍累々の地獄絵図と化していく。

そう、"ハンバーガー・ヒル"とはミンチにされた死体が溢れる丘を指した言葉。

有名な役者はほとんど出てこない。それはこの戦いが名も無き兵士たちの戦いだったからだ。
命を懸けて戦った彼らが、何故母国に帰って苦しまなければならなかったのか。
何故未来ある名も無き若者たちが異国の地のジャングルで木っ端微塵で死んでいかなければならなかったのか。

丘を登り切った兵士たちの表情は穏やかでもあり、哀しげでもあり、無表情にも見えた。この戦いになんの意味があったのか。

エンドロールまで、まるでドキュメンタリーを観ているかのような作品だった。

"ヤツは国のために死んだと?
そんなことを言うつもりはない。
ヤツはそんなことのために死んだんじゃない。
国や勲章なんてクソ食らえだ。
お前や仲間のためにヤツは戦った。
それだけだ"

"国にいる人たちはみんな戦争など存在しないかのように平然と暮らしてる"
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