つるみん

スケアクロウのつるみんのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.2
ニューシネマ史上最高のオープニング。

人との交わりを避けるマックスと人恋しさで頑張って話しかけようとするライオン。2人の友情物語が始まった瞬間が最高すぎる。性格は真反対な2人だけど、〝アメリカン・ドリーム〟を夢見ない、素朴で平和な生活を送りたいという共通点があり、一緒に行動することになる。そこから始まるロードムービーだけど、これは学校では教えてくれないものがたくさん詰まった素晴らしいヒューマンドラマとなっていた。

短気で人間嫌いな男が歩むのは〝洗車をして生活の安定を求める〟という道。
陽気で人懐っこい男が歩むのは"自らが見捨てた家族に再会する"という道。
ライオンがマックスに教えた事。
マックスがライオンに教えた事。

それは後半のある台詞が重要になってくる。

 「カラスはカカシ(=スケアクロウ)を恐れているのではなく笑っているんだ。あんなに面白い顔をしている奴はいい奴に違いないから,邪魔しないでおいてやろうってね。」
ライオンがマックスに話したこの台詞こそ本作の主軸であり、喧嘩っ早いマックスも,知らず知らずのうちに生き方が変わっていくのだ。

他にも、
「相手が怒っているからと言って、自分まで怒りに身を任せることはない。
怒っている奴がいるなら、笑わせてやればいい。相手が笑わないなら、自分が笑えばいい。自分が笑えば、相手も笑う。相手が笑えば、皆が笑う。皆で殴り合っても誰も喜ばないけど、皆で笑えば、楽しいだろ?」

あー、なんて良い言葉なんだ。

だが、笑っていれば何とかなる。とはならない事も教えてくれる。それがニューシネマ的締め方を織り交ぜながらラストに表現するあたりが本当に素晴らしい。
もちろんアル・パチーノとジーン・ハックマンあっての映画なんだけど、これは本当に温かくて、優しくて、深ーい映画だった。
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