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やわらかい手のakrutmのレビュー・感想・評価

やわらかい手(2007年製作の映画)
3.8
秘密のお仕事をすることになった60歳の平凡な未亡人女性を描く、サム・ガルバルスキ監督のヒューマンドラマ映画。

映画の内容はいたって単純。どこにでもいそうな初老のおばちゃんが、難病を患う孫の治療費のために、思わず飛び込んだ風俗店で手コキ女王になるという、ただそれだけの話である。一応、風俗店勤務がバレたときの周囲の偽善的な反応の中で、仲の悪かった(前半で、背景説明もなく仲の悪さだけを強調するので、嫁の言動がとても不自然なのだが)嫁だけが素直な反応を見せて感謝してくれたり、強面の風俗店オーナーと心を通わせ、お互いに惹かれ合うという味付けはなされているが、薄味なので、それらによって本作の評価やインパクトが向上するというほどではない。

本作に見どころがあるとすれば、この主人公のおばちゃんを演じているのが、あのマリアンヌ・フェイスフルという点だけであろう。どこから見てもマリアンヌ・フェイスフルと言われなければまったく気付かないほどのギャップが、インパクト大。マリアンヌ・フェイスフルと言えば、アラン・ドロンとの共演作『あの胸にもういちど』で、黒革のボディスーツを身に着けてバイクで疾走する姿が多くの男性(特にバイク野郎)を魅了した、峰不二子のモデルにもなったと言われる、あのマリアンヌ・フェイスフルなのである。役柄に合わせているということもあろうが、いやそれでも、なぜこんな太っちょおばちゃんになっちゃったの?と思わず叫びたくなってしまう。時の流れは残酷である。(失礼!)

このギャップによるインパクトを味わいたい人は、本作の前に『あの胸にもういちど』を見るべし。

・ミキ・マノイロビッチ扮する風俗店オーナーが、手コキ風俗のための部屋(装置)を「東京で見て作った日本式」と説明するシーンがある。そんなに日本の風俗産業は有名なのか、と妙なところで感心した。

・邦題の「やわらかい」はどこから来たのだろうか?作中では「なめらかな」手なので稼げるというオーナーの言葉はあるが。やわらかいからいいというわけではないだろうに(笑)
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