Yukenz

その男、凶暴につきのYukenzのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
3.7
少し前に空気階段がラジオのアフタートークで北野映画の聖地巡礼について話していたのがきっかけで、かなり久しぶりに本作を再見した。ストーリーも殆ど覚えていなかった。

自分はビートたけしのお笑い絶世期をテレビで欠かさず見ていた世代だが、今改めてこの若かりし日の彼の容姿を見ると私の記憶の中のイメージとずいぶん違っていて、こんなにカッコよかったっけ?と違和感を感じてしまった(いい意味で)。これなら女性にモテるだろうなと納得。

たけし演じる我妻(あづま)刑事の何を考えているのか分からないところが、寡黙というより何か異質な存在感があり不気味で近寄り難い印象を与える。
そして悪に対して無鉄砲で(言葉に反して実際は鉄砲を携行してるが)有無を言わさぬ徹底的なバイオレンスはこの作品の代名詞。

一方で終盤、現実逃避出来ない悲劇を目の当たりにした際の我妻の絶望感と、それを断ち切るための最終手段執行までの葛藤が短い時間の中に見事に凝縮されている。

バイオレンスの中に身を置いた代償というべきか、命の儚さを知らしめる呆気ない散り様と、それでも世界は変わらず悪事が醜く回っていくというニヒリズム。

今回北野イズムの原点に立ち戻り、改めて彼の他の監督作品を味わってみたくなった。
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