デニロ

宮本武蔵 二刀流開眼のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

宮本武蔵 二刀流開眼(1963年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前作で約した通り武蔵は吉岡道場の当主吉岡清十郎の前に現れる。

吉岡清十郎。武蔵の敵役の扱いなのだがその実体は名門道場の悩み多き後継ぎ。自覚しているのだ。名門の子故に何者かでならねばならぬ、が、その何者とは何であればよいのか。究極、剣の道において自身の実力の未熟を知るに至る。門弟にとってもいつまでも都合のいい若様でしかないということを。そんな屈折を演じるのは江原真二郎。しかしやはり名門の子として育てられただけはある。武蔵との戦いには従者一人を連れ臨む。門弟の心配をよそに潔いではないか。武蔵に、真剣か木刀か、と問われ、思わず木刀と言ってしまうところは当主としての責任感からなのだろうと、勝手に好意的に思うのだが、勝負あり。一撃で決着。武蔵は、名門の子、戦うべき相手ではなかった、が、名門剣法家との勝利に自信を深める。

さて、武蔵は戦うべき相手ではないもう一人の剣士を知る。柳生新陰流の祖柳生石舟斎。柳生の里まで出向くが彼の人は隠居の身として立ち合い等は拒んでいる。何としてもと思って策を巡らしているその時、吉岡清十郎の弟伝七郎も目的を同じくして石舟斎のもとを訪ねていた。石舟斎面会を求めるが、石舟斎はその返事として手紙に自ら太刀で切った芍薬を添える。清十郎は憤怒の果てに柳生の里を去る。さて、武蔵はその切り花の切り口を見てsomething elseを知る。これは使える。武蔵もその花を太刀で切り書状と共に柳生家に送る。柳生四高弟がその謎かけを見て、どっちかは先生が切ったものだが、どっちだかわからぬ。武蔵に会ってみたいと思わせることに成功する。

そのあと、武蔵の弟子城太郎の犬殺しから四高弟と剣を交えることになるのだが、そこにお通の笛の音が被さる。え?隙の出た武蔵の着物の袖が切られる。瞬時、武蔵は小刀を抜きニ刀で構える。二刀流開眼。

翌朝、石舟斎の庵の前に立つ武蔵。そこにお通の姿を認める。お通の姿を背に立ち去る武蔵。君に告ぐ五月芍薬今生の苦しい恋をしておったのだ(福島泰樹)

さあ、吉岡道場の当主をぶちのめした武蔵と吉岡の遺恨。吉岡伝七郎との戦い。佐々木小次郎との邂逅。物語はこれから大詰めに入るのだが、それはまた半年後。

1963年製作公開。原作内田吐夢。脚色内田吐夢、鈴木尚之。監督内田吐夢。

丸の内TOEI 中村錦之助=萬屋錦之介 生誕90周年記念 にて
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