千年女優

ツィゴイネルワイゼンの千年女優のレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
3.5
大正時代。陸軍士官学校のドイツ語教授を務める真面目できっちした性格の既婚男性で、ジプシーのように各地を彷徨うかつての同僚の中砂糺とは正反対の性格ながら奇妙な友情関係を育む靑地豊二郎。葬式帰りの芸者を弄んだと思えば一年後に彼女と瓜二つの女性と結婚する奔放な中砂に振り回される彼の奇妙な体験を描いたドラマ映画です。

戦後に松竹大船撮影所に合格して映画の道を歩み出し、移籍した日活で四十もの作品の監督を担った鈴木清順が、独特の作風を否定されて日活から不当に解雇された事に端を発して起こった「鈴木清順問題共闘会議」からの復活後に制作した1980年公開の作品で、原田芳雄と藤田敏八が織りなす不思議な物語が一部でカルト的人気を集めました。

ATG公開作品らしいジャンル分け不可能な作品で、和洋折衷の時代を舞台に生と死を始め様々な相反する概念が一触くたになっていく様を対照的なふたりの交錯で描きます。主題とするものにどれだけの意味があるかは分かりかねるところがありますが、ラストまで決して手を明かさないことで観る者を煙に巻いて意味深さを演出する一作です。
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