めしいらず

愛を読むひとのめしいらずのレビュー・感想・評価

愛を読むひと(2008年製作の映画)
2.6
ホロコーストが残した禍根。戦中にナチに傾倒した同胞同士が、戦後になって言い逃れし始める。役割を担っただけの末端にその罪科を押し付け、己の量刑を少しでも軽くしようとする。「(もしその場に居たら)あなたならどうされますか?」。問いかけに誰も答えない。曖昧なままの罪の所在。ハンナの日陰者としての人生。彼女にはどうしても他人に知られたくない秘密があったせいだ。たとえそれを守る所為で永く服役することになろうとも。秘密に気づいた主人公は、昔日に恋心を抱いたハンナの心中を慮って口を閉ざす。そして判決から20年後の再会。愛情の有無を確かめるかのように差し出されたハンナの手に主人公はそっと触れ、引っ込める。そして口にしたのは親切な施しの言葉だった。その時、彼女の表情が翳る。仮出所の当日の出来事。ついぞ報われなかった痛ましい人生の物語。
翻訳の純文学小説がほとんご読まれていない日本の読書事情の中で、シュリンクの原作「朗読者」は印象的なタイトルと装画のおかげだろうか、どの書店でも平積みされ、異例のヒットを飛ばしていたのが懐かしい。初期の新潮クレストブックスの一冊として、このハイレベルな叢書の存在を強烈にアピールしていた。
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