たけひろ

エターナル・サンシャインのたけひろのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
5.0
「もしも恋人との記憶を消してくれる会社が存在したら?」

そんなひとつのアイデアから、こんなにも面白い作品が生まれるなんて。

たとえ、お互いの記憶を完全に消し去ったとしても、また再び思い出の浜辺で出会って、無意識のうちに惹かれ合う、だなんて、究極にロマンティックな設定。

「記憶を消されないように、記憶の中で逃げる」

そんな奇妙でユニークな表現が、ジム・キャリー演じるジョエルの記憶の中で、時間も場所も次々と変わり、縦横無尽に、イマジネーション豊かに繰り広げられる。

その飛躍感ある構成、そして手作り感あふれる映像に、心が躍る。

ケイト・ウィンスレット演じるクレメンタインとの、幸せだったり、悲しかったりした、様々な思い出を辿ってゆくことで、衝動的に、一度は消し去りたいと願った彼女との記憶なのに

「やっぱり嫌だ!どうしても消したくない!」

となり、必死に抵抗するジョエルの姿は、真に迫っていて、共感を覚える。

失恋して、一ヶ月間、バナナしか喉を通らなかった経験、ある。

個人的に、主役のふたり、ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットのキャリアの中では、本作が一番、魅力的な演技だと評価している、勝手に。

記憶除去の会社、ラクーナ社の面々も、主役級の俳優陣による豪華アンサンブルで心から楽しんだ。

ジョン・ブライオンのサントラと、ベックの主題歌も、切なくて、美しくて、冬の空気感とあいまって、心にしみる。

脚本のチャーリー・カウフマンと監督のミシェル・ゴンドリーの天才コンビが、独創的な発想で生み出した、奇跡の映画だ。

幸せは無垢な心に宿る

忘却は許すこと

太陽の光に導かれ

陰りなき祈りは運命を動かす

大切な人との関係の中で

「忘れる」

ということは

「許す」

ということと同義語になり得るのだろうか。

再び喧嘩別れになってしまうのかな、となったクライマックス。

しかし「OK」と微笑んだジョエル。

驚いて「OK」と泣き笑いをしたクレメンタイン。

互いを受け入れたふたりの姿に「忘却は許すこと」というテーマをより強く感じた。

少なくとも、私にとっては特別で、大好きな作品。

一度だけ観て、複雑で良くわからなかったという人にも、設定を理解した上でもう一度、観て欲しくなる。

逆に私は、記憶を消して、初めての未体験に戻り、また観たくなる。

(この映画を好きな人、名前に惹かれて表参道のカフェ「モントーク」に入ってしまう説)
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