都会に生き現代社会をテーマに世相や風俗を描く事を得意とした、川島雄三監督の赤線地帯を舞台にした人間ドラマ。
勝鬨橋で路頭に迷う男女がバスに乗りたどり着いた先は、赤線地帯〝洲崎パラダイス〟の入り口。
洲崎は現在で言えば東京は江東区の木場辺りで、洲崎という地名は今はないはず。
そびえ立つ門には華やかに輝く〝洲崎パラダイス〟の文字。
モノクロ映画でもその先にパラダイスがあるんだろうと、想像力を掻き立て怪しげで寂しげな華やかさが分かる。
男にとっては〝楽園〝…女にとっては〝金〟の誘惑…。
その橋を渡り門をくぐれば、パラダイスが待っているんだと。
しかしその男女は橋を渡らない、〝洲崎パラダイス〟の門が見える手前で立ち止まる。
実はこの辺りに昔3年間ほど遥か昔住んでいた事があるが、撮影当時の面影はまったくない。
映画の中に登場する洲崎神社も今もひっそりと健在し、チラッと出てくる蕎麦屋は建物は変わっているが現存している。(住んでる当時で現時点では分かりません)
また、赤線地帯内の建物は残っていないが、当時の建物を改築したような建物が数件ある。
それは大正モダンとでも言うべきか、コンクリートの外壁に丸窓がアンバランスに施される。
これは憶測だがこの赤線一帯が外堀で囲まれているような立地で、それは赤線で働く女性達の逃亡を防ぐためなのではないか。
何の変哲もないドラマだが、何かから逃げるような男女の生き方は何だか侘しい。
当時の赤線付近で生きる一般庶民の暮らしぶりを見るだけでも面白いのかもしれない。
いずれにせよ当時は合法な赤線を現在の価値観で判断するのは安易すぎ、文化として貴重なこの映画を残してほしい..★,