mosan

ゆれるのmosanのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
4.0
真実なんて1つもないのかもな。ぜんぶ、それぞれの目と心を通してねじ曲げて見てるのかも。

兄弟の信じたい気持ちと信じたくない気持ち、本心と嘘が絡み合って、
お互いがお互いを大きな存在、でも俺だって、俺の方が、そんな嫉妬みたいな気持ちが最初から最後まで見え隠れしてた。

兄は弟のことをわかっていたんだと思う。
きっと、小さい頃からずっと「お兄ちゃんだから」で我慢してきたことがたくさんあって、それは頼まれたわけじゃないけど自然に癖みたいになって、
その度に弟のこと、家族のことを考えてきた兄にはきっと色んなことが見えすぎるくらい見えてて、だから見えてないふりもできて。
弟はいつも自分のやりたいようにやってきて、その背景には兄の我慢があるってこともわかりつつ、それぞれ選択してるわけでしょ、とも。
だからこそ、弟からは誠実で弟思いの優しい兄に見えていた。
それが、あの夜試されてたってことを知って、こんなの自分が知ってる兄じゃない、であぁなったんじゃないか。
そして兄は弟のそういう性格も知って、試したような気もする。
自分は好きで優等生でいるわけじゃないし、弟に嫉妬してるし、ちゃんと兄に絶望してほしい、兄をやめさせてほしい、それを言葉にしてほしい、って願いにも感じた。

子供の頃はシンプルなことも、大人になると複雑になる。立場や環境、選択できることは、いくら兄弟でも平等ではないから。
一方は家族のためを思って選んだことでも、もう一方は頼んでないし勝手にそうしたんでしょになる。兄は守り、弟は守られてきた。たぶんお互い、わかってはいるんだけど、それでも愛しい気持ちと憎たらしい気持ちがおり混ざったりする。大人って、人間ってむずかしいよね。

ラストのあの顔は、兄の顔だったのかな?もう一回、今度はちゃんと腹割って兄弟はじめようか、だったらいいな。
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