ちいさな泥棒

厳窟王のちいさな泥棒のレビュー・感想・評価

厳窟王(1934年製作の映画)
4.4
純真無垢な船乗りの青年ダンテス。愛する女性と結婚式の余興を挙げているさなかに、三人の男の陰謀により無実の罪を着せられ投獄されてしまう。14年後脱獄に成功しとある手段で手に入れた財力により、ダンテスはモンテ・クリスト伯爵と名を変え3人への復讐を誓う、というお話。偽造の死亡診断書まで出されてしまい、愛する人を失ってしまったんだと恋人は涙にくれる。しかもダンテス本人は死んだことにされちゃったことを知らないのがまたなんとも…詰。

お話自体はリベンジものでグイグイ追い詰めていくんだけれど、近寄りかたに品があり。ストーリーはいたってシンプルだけれど、そこにフランス革命であったり、監獄での友情であったりとちょこっと絡めてきたりもする。昔の恋人に再会したとき、復讐の鬼になっている(けど品はある)彼を見て女性のほうは「あなたはあのとき私が好きだったあなたではない…泣」みたいな雰囲気だったので、ああ、二兎を追うものは一兎も得ずなのかな…切ないな〜なんて場面もあったりしたけれど、、

けどスカッ!としたし面白かった!!
20年前の復讐を果たすなんて相当な根気とメンタルがないとできないよなー。

「僕たちもその木に乗せてよ」

「ふふふ」「君たちも自分たちの木を見つけなさい😉」

は、なんか、よかったな〜ふふふ。


なぜこれを観ようと思ったかといいますと、、、


いまNetflixにきている『ザ・カルト 詐欺とプログラムと強制収容』というドキュメンタリーのなかで、実際そこに収容されたことがあり人としての尊厳や理不尽な暴力を受けてきた子たちが、久しぶりにその場所に集まりあの時何があったのかと実態を暴くため、資料を集めたり再現をしたりする。そのなかで図書室の話になり、読める本も制限されていたのになぜか『モンテ・クリスト伯爵』だけは置いてあって。「なんせここの長は頭が悪いから、この本は置いちゃいけないもんだってわかんなかったんじゃないの」とか言われてたけど、「このクリスト伯爵のように自分達も理不尽なめにあっている。いつかここを出てクリスト伯爵のように実態を暴いて復讐してやろうって何度も読んで思ったんだ」と話していたのが印象的で。

その書物も映画も知らなかったので、できることが限られている空間のなかで、それでもやってやる!とこの子の気持ちを強く持たせた物語はどんなものだったのだろうと興味が湧いて。お世話になりまくりのコスミック出版さまの10枚組『武器よさらば』に入ってたので、たぶん1年ぶりくらいに即ポチしました!

こうやって数珠繋ぎ的に知れたり観ていくのって楽しいですよねぇ。それに、あの時あの場所にいた彼女たちの心の炎を消さなかったもの、壊れたり折れかけていただろうけど、それでも灯り続けて「いつかここを出てやる!」と踏ん張らせる強さのキッカケになったもの、それがとても気になったので。ほかにもエネル源はいっぱいあったとは思うんですけど、このお話が一番印象的だったので、知れてよかったです。