映画漬廃人伊波興一

甘い生活の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
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そりゃあフェリーニだって悪くないさ 「甘い生活」
付き合いの古い友人の一人から「お前がフェリーニについて語ったのを聞いた事ないが嫌いなのか?」最近問われたので唐突に観たくなりました。
どの映画でもよかったのですがこれでこの3時間と対峙するのは最後にしようと本作を選びました。
イタリア国をひとつの「主人公」として捉えてこの映画に接すると貌が現れます。
日本と同じく敗戦から立ち上がった「主人公」の可笑しく醜くそして愛おしいさまがくっきりと、です。
ファーストシーンのヘリから吊るされた巨大像とラストの巨大エイの死骸なんてその象徴でしょうね。
ただ当時革新的だと思われていたフェリーニが安易に寄りかかったメタファーは今はどこか古びた印象がございます。
近頃観たタル・べーラの「ヴェルク・マイスター・ハーモニー」やサミュエル・フラーの「裸のキッス」、あるいはフェリーニの師匠格ロベルト・ロッセリーニの「イタリア旅行」を引き合いに出すまでもなくホンモノはメタファーに頼ったりしません