真田ピロシキ

ガンマー第3号/宇宙大作戦の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.3
YouTubeで限定公開中。深作欣二監督をはじめスタッフは日本人でキャストは全員外国人という珍しい日本映画。それが効果的かはさておき、国際色豊かで夢がある。話も大盤振る舞いされていて、映画が始まってすぐに明らかになるのは巨大遊星衝突の危機。しかも直前。それを上陸して核で破壊してしまおうというアルマゲドンよりも無茶なミッション。驚くことに何とこれは25分くらいで終わる前座。本番はその星で付着したゲル状生命体と宇宙ステーションガンマー3号で繰り広げられるサバイバルアクション。これを80分足らずで描く。贅沢な時間の使い方である。今のハリウッドなら前後編で1本につき3時間近く費やして、あわよくば続編への含みを持たせそう。しかしそんなことはせずに必要以上に脇を描きもせず無駄を排除して主題となるところに集中している。遊星パートが宇宙生物を登場させるためだけの存在かというとそうでもなくて、主人公のジャック中佐は遊星爆破のために突如派遣された外部の人間で、それがガンマー3号司令官のヴィンス中佐にはあまり面白くなくて後に亀裂を生じさせる展開に繋がっている。

宇宙生物は不定形で不気味だった第一形態に対して成長して二足歩行になるとキモカワ系で正直ファニー。知性もなくてゾンビ程度に誘導は容易。しかしコイツ、電気エネルギーを吸収して再生と増殖を繰り広げる文明生物の天敵のような奴で、電力なしでは何もできない隔絶された宇宙ステーションは食料の宝庫。あっという間に増えるワカメちゃん状態で、単体なら笑えるキモカワちゃんでも溢れるとなかなか気色が悪く見えてきて、奴らで混雑した通路を華麗に回避しながら通り過ぎる姿はまるで初代PS時代のバイオハザードのよう。やはりカテゴリーとしてはゾンビに近しいのか。一応炎は効くのでエイリアンみたく焼却は有効であるけれど、こんな狭いステーションで火炎放射器など使えずそもそも置いていないので奴らは地の利を十分に発揮。地道に誘導隔離戦法を強いられてなかなか手強いのだった。

後年の『宇宙からのメッセージ』よりも宇宙SFとしてはずっとまともで、ステーション外で宇宙遊泳しながらキモカワカメちゃんと戦う絵面はどうにもゆるかったけど、少なくとも宇宙服はちゃんと着てる。反面、深作監督らしい反権力な気概はこの脚本からはなくてそれは大人しすぎたかな。