真田ピロシキ

シティーハンターの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

シティーハンター(2024年製作の映画)
3.8
良いじゃあないか。とっくに冴羽獠の年齢を超えた今では所詮少年ジャンプではアダルティな漫画でしかなかったシティハンターもガキくさい漫画に過ぎない。そのことを思い知らされたのが最近の焼き直しみたいなアニメ映画やフランスでの実写映画だった。とにかく軽薄を通り越して幼稚な獠のスケベ演出を見るとため息しか出ず、特にフランス版は実写なのにアニメ以上に頭が悪くてしかもゲイ差別的だしどうしようもなかった。これも予告でもっこりもっこり言ってたので期待していなかったがそこは意外に悪くない。そこまでしつこくなくてもっこりショーなんてくだらなくて思わず笑ってしまった。下品なアラジンもいい。覗きはこういうのにリアルで嫌な思いをしてる女性視聴者がいるだろうからどうかと思うが、獠の印象をスケベなお調子者で留められている。

なので大人として格好がつけられてて、しかも鈴木亮平による説得力。精悍な顔つきにガタイの良さ、仕草に水商売のお姉ちゃんへの台詞では神谷明っぽくなったり非常に再現度が高い。それで舞台は現実の新宿で世界観もそこまで突飛なところはないので実写である強みを活かしやすくて、もしかしたらアニメよりもシティハンターを映えさせられているのではないかとさえ思う。言うても変な組織の変な格好した悪役は出てくるけれども、それはコスプレ会場で戦わせてマンガ臭さを世界観に上手く落とし込ませていて、それが前振りでクライマックスではバットマンのベインみたいな敵へ「コスプレかよ」って言わせて、漫画の世界観に入り込みやすい工夫が考えられている。原作の知名度と鈴木亮平に胡座をかいた実写化ではない。

獠はジャンプ漫画には貴重な銃で戦う主人公で肉弾戦も時には披露するもののそれだけではせいぜいジョンウィックの二番煎じとなってしまうが、これも色んな活用方を編み出していて床の蓋を浮かび上がらせて吹き飛ばしそこに銃弾ぶち込むのとかユニーク。単調さはまだズブの素人である香を弾倉や別の銃を渡すサポート要員に徹させて、これで香のバディ感を出せてガンアクションの華リロードのカッコ良さも演出できてWin-Win。

トー横を少し気楽に舞台装置として使っている気がするし、90年代からずっと衰退した日本でこんな強大な国際的犯罪組織が活動するかなという思いはあるものの2020年代にやるシティハンターを示せていると思う。ただゲットワイルドはもう耳タコ。そこは今の似合った歌にしてくれ。