真田ピロシキ

モキシー ~私たちのムーブメント~の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.4
40代になってパンクスになりつつあるマン。最近パレスチナのスタンディングデモに参加してる縁で知ったパンクスの冊子の中にアメリカのティーンズガールズバンド リンダリンダズのことが書いてあり、バンド名の由来がブルーハーツのあの曲なのもあって聴いてみたら一気に気に入ってハマった。それで調べていたらこの映画に出演していることを知りネトフリ再加入して視聴開始。

本作は高校を舞台にした直球のフェミニズム映画。アメリカンハイスクール映画は進んではなかなか見ないジャンルで前々からエゲツないスクールカースト描写にウエっとしていたが、最近ではSNSを介した「ヤリたい女や良いケツ女」などのランキング、品定めが横行してるようで、相変わらずアメフト部はクソで週末には家でパーリィーしてたりと心の底からアメリカに生まれなくて良かったと再確認できる。日本もクソなのは言うまでもない。それに反発した主人公ヴィヴィアンが昔フェミニストだった母親に触発されてレジスタンス的フェミニズム活動モキシーを始めて、その中でフェミニズムパンクバンドのビキニキルが大きく取り上げられてるのがちょうど聴き始めてたのでとても盛り上がる。下を見るな上を向け。私たちは間違っていない。少数派だからって多数派様のご機嫌を伺う必要などないというメッセージを黒人転校生ルーシーと合わせて発していたのは広い層に向けた映画と感じられた。

しかしだんだん退屈になる。描いていることは絶対的に正しい。でも正しいだけの教科書を見たいのではない。物語に意外性はなく、加えて登場人物の造形が紋切り型すぎて欠伸が出る。アメフト部キャプテンのミッチェルは絵に描いたような高慢脳筋白人シス男性。演じているのはアーノルド・シュワルツェネッガーの息子パトリックで超エリート家系だからかこのいけ好かなさが素でやってるのかと思わせる。良い演技なのかもしれないが2世タレントなんか大嫌いだ!夏休みの間に背が伸びたアジア系男子のセスはフェミニズムにも理解を示す誠実で結構ルックスも良いパーフェクト彼氏。これが頑張って良い男性を演じていたが実際はろくでもないミソジニーを抱えてたとかなら面白かったが最後まで理解のあるフェミニスト彼氏。人形のような奴。マイノリティのアジア系だから完全無欠に描いたなら逆にバカにしてんのかと思うよ。グラデーションがない。そもそも主人公が白人シス女性の時点で無難なところを突いたと感じ、ルーシーや親友のアジア系女性クラウディアの方が深いところを突けたのではないか。特にクラウディアはアジア系移民だから白人社会で声を上げるのにリスクを伴う姿を描かれていて問題提起としてはこっちの方が深くなるはずなのに、劇中ではなんとなくモキシーに加わり何じゃそりゃ。選挙に負けた後のヴィヴィアンが自己中な一面を露わにすると少しは盛り返したが既に消化試合となっていた。自分が男性だからこういう感想を抱けるのかもしれないという思いはあります。だったらなおのことセスはもっと複雑さのある描き方をして男性視聴者に居心地の悪さを感じさせて欲しかった。

劇中でリンダリンダズの演奏が披露されたのが最高潮。それでこのスコア。あれがなければ3点。