真田ピロシキ

ブレイドの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ブレイド(1998年製作の映画)
3.8
ハマり中の鉄拳8でサブキャラを模索していて実写映画でも目立ってた黒人ニンジャのレイヴンを試してみたらとてもカッコよくて気に入った。それでレイヴンのモデルはウェズリー・スナイプスと言われていて、あの技が多くて難しいゲームのモチベーションを高めるために何か出演作を見たく、それならイメージ的にも本作だろうと思い鑑賞。懐かしい木曜洋画劇場で見た気がするものの真剣には見ていなかったらしく全然覚えていない。初見同然。2と3はちゃんと見てる。

これも原作はマーベルコミックだが本作はまだサム・ライミのスパイダーマンすらなかった20世紀末作品。当時はブレイドなんてマンガがあること知らずヒーロー映画の方法論も確立されていない。なのでコスプレマンガ臭さがなく、異色のヴァンパイアアクションといった趣。マンガのビジュアルを知らないがブレイドの格好が防弾アーマーにコートとサングラス着用の街中にいると怪しいことこの上ないが現実的にはそこまで乖離してなく、当時広く受け入れられた理由の一つだったと思われる。

敵もマンガっぽさが薄い。人間と協定を結び社会の影に潜む(ロシア系?)マフィアで、人間の中にもヴァンパイアの力に惹かれて自ら走狗になりたがる奴もいる。コイツらも格好はまともなので宇宙からコスプレしてやってきたナントカカントカよりずっとすんなり世界観に入り込める。面白いのはこの組織の中に内部抗争を持ち込んでいて、悪役であるフロストは元は人間で数百年生きてる古株からは蔑まれている。しかし元は人間であるためにヴァンパイアの因習から自由なフロストはタブーに挑戦するのも厭わず、その姿勢に純血ヴァンパイアの若手は惹きつけられる。フロストには実は純血じゃないコンプレックスが若干感じられて、複雑さを抱きながらも旧弊を打破せんとしているどこかアンチヒーロー的な良キャラ。実は主人公のブレイドと境遇的には似ているのがそれを強めさせてる。2と3の悪役にはそういうのはなかったと思う。フロスト以外もマンガにいるキャラなのかもしれないが、マンガを知らなくてもお調子者のクインや振る舞いが堂々とした金髪の女ヴァンパイア、名前すら分からないがブレイド相手に堂々とした立ち回りを演じた女ヴァンパイアなどどうでもいいオタク知識を求められずに印象に残るキャラクターを描けている。

この敵組織に説得力を持たせられるのは独立した唯一の世界観だからで、これがくそったれ商業主義ユニバースの一員であったならたかが吸血鬼が世界を支配すると言っても鼻で笑ってしまうし、ラストでブレイドが自身を治療するのは奴らを滅ぼした後だと言う姿にも繋がる。アベンジャーズとかに有名無名でいくらでも代わりがいるなら別に頑張らなくても良いんじゃね?となるでしょ。だがこの世界ではブレイドのみが悪のヴァンパイアと有利に戦える存在。逃げるわけにはいかないヒーローの宿命で、そこに母をも変えられた哀しみが加わりブレイドのキャラを誇り高くする。

映像は20年以上前なので当然古いが小気味良く格闘、斬撃、ガンアクションを織り交ぜられてて退屈しない。ナイトクラブなどの猥雑さやセクシュアルな吸血シーンのように今のアメコミ映画より対象年齢を高くしてるようで、こんな子供染みた映画でご立派なことを仰られましてもみたいな違和感もなく、最近のアメコミ映画で言うとヴェノムが素材の割にソフトな表現でガッカリした人には薦められる。チープだがゴア表現も多い。チープだから助かる。胴を斬ったら血がビヨーンと伸びて繋がるユニーク演出。北斗の拳風な破裂もあり。アメコミ映画がジャンルとして大きくなった代わりに失ったものを思い出させてくれる。これが再映画化される話を聞いた気がするがユニバースに入れられるのかな。嫌だなあ。