【光州インファ学校事件】
トガニとは「坩堝(るつぼ)」の意。では、何をもって坩堝なのか。
2005年に韓国で実際に起きた、聴覚障害者学校の児童への性犯罪と虐待事件を“再構築“した作品であり、吐き気を催すほど悍ましく描いた作品でもある。
監督:ファン・ドンヒョク
脚本:ファン・ドンヒョク
原作:コン・ジヨン「トガニ 幼き瞳の告発」
あらすじ
地方の聴覚障害者学校に教師として赴任することになったカン・イノ(コン・ユ)は、車が故障し修理場で出会ったソ・ユジン(チョン・ユミ)に、学校まで送ってもらうことになる。
しかし、その学校は普通とは違う異様さに包まれていた…。
題材となった事件は有名だ。いや、有名に"なった“。
その事件に踏み込んだ原作と映画化となった今作をきっかけに「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法 」の法制定への道を作った。
通称「トガニ法」
もう名前だけでわかるだろう。全国民を憤らせ、どれほどの衝撃と影響を韓国社会に与えたのかを。
「悪魔の所業とその裁判」
描かれるのは腐った人間、人間、人間。
足枷しかない法や前官礼遇(幹部級の判事出身弁護士を初事件で優遇)などの腐った慣習。因みに、この慣習は法曹界に限ったことではなく、当時は政府の凡ゆる省庁にも蔓延し政府全体の悪習と化していた。坩堝、坩堝、坩堝。
視聴者はイエローストーンが噴火するほど、はらわたが煮えくり返る。
例えるならば
マザー・テレサがドロップキック、ガンジーがジャイアントスイング、皆の身近にいる一番温厚な人が無表情で毒霧するレベルだ。
とは言え、実話をベースにしているが後半になるに従い脚色も強くなってくる。
実際に起きた事
実際には無い事
強調された部分
物語は、これでもかと言うほどの負の連鎖を衝撃的に描かれている。事実に忠実だと、過去の事件も含め被害規模が大きすぎて再構築せざるを得なかった筈だ。
結果的に一部強調した表現に行き着いたのは、この事件を“世に知らしめるための怒り“に他ならない。
実際に、国民の“反応“を目の当たりにした政府は即座に対応した。だが、これは国民の怒りを恐れた対症療法。
国に関わらず起きている事とは言え、何故それが“今作前“に出来なかったのか。
「即座に対応が出来た」
そこにこそ“韓国社会の闇“があるのかも知れない。
もっと、もっと早くと思わずにはいられない。第二、第三の、“トガニ“が生まれる前に。