さすらいの用心棒

ライアンの娘のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

ライアンの娘(1970年製作の映画)
3.8
アイルランド独立戦争前夜の時代、英国軍人と人妻との不倫を通して描かれるヒューマンドラマを『アラビアのロレンス』のデヴィンド・リーンが監督。

『戦場にかける橋』で密林を、『アラビアのロレンス』で砂漠を、『ドクトル・ジバゴ』で雪原を写してきたリーン監督が今回挑むのは、海。
ノーランが『ダンケルク』撮影のために参考にしたと言っているが、その理由はこの映画に映される浜辺の比類なき美しさにあると思う。世界一美しく浜辺を写した映画は、と訊かれたら、たぶん訊かれないが、絶対に本作を推す。
かつて自分の教師だった男に自ら求婚しておいて、歳の差からくる欲求不満から若き将校との浮気に走る主人公というのは、共鳴を呼びにくいだろうし、浮気に至る経緯が弱いことや、事件の真相が不明のままであることなど色々と欠点を抱えているストーリーではあるが、圧倒的に美しい画、3時間という上映時間と、重厚な物語が有無を言わせぬ説得力をもっていて、気付いたら三時間経っている。映画を見たな、という気にさせてくれる。

アイルランドの村人が愚鈍で卑しい人たちとして描かれているのは、やはりデヴィッド・リーンが英国人であることに由来しているのか。