櫻イミト

黒猫の櫻イミトのレビュー・感想・評価

黒猫(1934年製作の映画)
3.5
黒猫が好きなので前から気になっていた作品。

「フランケンシュタイン」(1931)のボリス・カーロフと「魔人ドラキュラ」(1931)のベラ・ルゴシが初共演し、この年のユニバーサルで最高のヒットを記録したホラー映画。ポーの「黒猫」から着想したとのことだが内容は全く違う。

ある新婚夫婦が列車で乗り合わせた学者ヴィトス(ルゴシ)と行き先が同じで、一緒にバスに乗り継ぐ。ところがバスが事故にあい妻が怪我。夫婦はヴィトスの目的地であるポールツィグ(カーロフ)の城へと同行したのだが。。。

良い意味で非常にヘンテコな映画だった。目を引く美術に役者も魅力的でカメラも本格的。なのに、柱となるシナリオと演出が唐突な流れの連続でほぼ支離滅裂なのだ。結果的にアウトサイダーアートのようなシュールな味わいの一本になっている。

ビジュアルと世界観はとても好みだった。二大怪物俳優の顔力、バウハウス建築の城、レトロ科学な地下室、死体性愛、悪魔崇拝と次々に好物が出てきた。本作はウルマー監督のデビュー作で、それまではドイツ表現主義の代表的な監督F・W・ムルナウの元で美術監督をしていたとのこと。ビジュアルが突出しているのは当然であり、本作は「ドイツ表現主義最後の作品」とも評されている。

黒猫は、3回ぐらいしか出番はないが、城主のペットでポールツグの弱点という珍設定だった。ただ歩いて出てくるだけでポールツグが苦しむという強い黒猫だった。

※カーロフとルゴシが並ぶと、ルゴシの方が背が高くて意外だった。
 調べたらカーロフは180cm、ルゴシは185cmだった

※カーロフとルゴシは本作も含めて8本共演している
櫻イミト

櫻イミト