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東京物語のmaruchanのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.0
小津安二郎監督が家族のあり方を丁寧にリアルに描いた、1953年公開の日本を代表するモノクロ映画。

寿命が伸びた現在だと感覚が異なるけれど
70歳近い年老いた両親が、故郷の尾道から東京で家庭を持つ子どもたちを訪ねるところから話しは始まります。

二人は、
東京で家庭を持つ長男、長女、妻を残して戦争で亡くなった次男、大阪で勤める三男、ともに尾道で暮らす三女の五人の子どもを持つ。

家庭のある長男、長女、
そして次男の嫁のいる東京。

実の子たちは、本人はそんな邪険にしているわけではないけれど、
久しぶりに会った、遠くから遥々汽車で訪れた両親をどこか煙たく雑に扱う。
仕事が忙しく二人をどこも連れていけないと、本人たちはよかれと思い両親を熱海の温泉に宿泊させる。
両親は子どもたち、孫たちと時間を過ごすために東京へきたのに。

原節子さん演じる亡き次男の嫁ともこは、長女からの連絡を快く受け、両親に東京を案内し、自宅にまで招き、ささやかではあるが温かくもてなす。


しばらく東京で過ごし両親が尾道へ戻ると、
母の危篤という電報が東京の子どもたちに届く。


母の死に直面したときの、
それぞれの登場人物の様子のリアルさに、心が切なくキューっとなった。

ひとつひとつのシーンの繋がりをこんなに丁寧に感じたのははじめて。

わたしが本作の凄さを芯から理解するためにはあと20年くらいかかりそうだけど、
観る年代により受け取り方が変わる作品だと思うので今観られてよかったな、と思います。

誰のことも責めず、
ただただ自分自身は思いやりを持って接する原節子さん演じるともこがとても素敵だった。

山田洋次監督が本作をリメイクした『東京家族』を観たけれど、
すっかりこのリメイクだということは忘れていて、
なんだか似ているなーと途中まで悶々としていました。

本作を観てからの方がより真髄を掴めそうなのでまた機会があったら観たい。



📝memo
はじめての小野安二郎。
父役の方は当時49歳とかなり若くダンディな方らしい。素晴らしい役作りに驚愕。
はじめなかなか集中できなかった自分にがっかり。長男の嫁とともこさんの見分けがつかない程度の観かたをしてしまった。
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