TAK44マグナム

ベルフラワーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ベルフラワー(2011年製作の映画)
3.8
すべて燃やしてしまえ。


数あるマッドマックスのフォロワーの中でもかなりの異色作。

「マッドマックス2」というか、世紀末の荒野に君臨するヒューマンガス様を崇拝してやまないボンクラ二人組が、火炎放射器や火を噴く改造車を作りながら、恋をしたり浮気をされたりで、みんな消し炭になっちゃえば良いのにねって悶々とする、そんなお話。

監督・脚本・主演のエヴァン・グローデルが実体験を元に作り上げ、同じように恋愛をこじらせた経験をもつ世界中のマッドマックスなボンクラたちの共感を得た結果、非常に高い評価をうけたらしいのですが、何が凄いって、主人公の相手役が本当にエヴァン・グローデルの失恋相手なんですって!
え?どういうこと?
劇中、あんな事やそんな事をやってましたけれど?
オッパイもメチャ揺れまくってましたけれど?
どうして元カノが演じているのか、その経緯を知りたいので、そちらを映画化してほしいです。

※どうやら元カノが自分から出演すると言い出したらしい。


後半、ある出来事のあとから、主人公の妄想にスライドしてゆくんですが、どうにもこの映画のすべてはファンタジーなんじゃないかって思えるんですよね。
カノジョとコオロギの早食いで知り合ったり、親友はイマジナリーフレンドなんじゃないかってぐらい主人公にベッタベタで優しいし、そもそもいい年こいて働いている様子も無い割に生活ができていて、日がな一日中、火炎放射器を作って遊んでられるって、どこからどう見ても非現実的でしょう。
親の遺産か何か持っているのかと思っちゃいましたよ。
ラストカットも夢でもみているようどこか幻想的だし、「全部夢でした」ってオチでも驚かないですよ。
ちょっとブチっとなるけれど。


世紀末みたいな色味のヒリついた映像と、どこか突き放したようなカメラワークやカット割りが、アップダウンする主人公の不安定な心情を抉り出すかのよう。
恋に盲目になってゆく前半と、暴走する後半のコントラストが凄まじく強くて鋭利です。
でも、最後はしんみり。
やはり、そんな簡単に世紀末的世界はやってこないし、ヒューマンガス様にはなれやしないのでした(もしかしたら、ヒューマンガス様の知られざる過去が本作の主人公という可能性もなきにしもあらずですが)。
ちなみに、マグナム的にはヒューマンガス様のキャラクターは好きですけれど、正直アホにしか見えないのであんまりなりたくはないですね(苦笑)
マイクを持たせたら世紀末で一番ですけれど!


男が思っている以上に女子はうつろいやすいものなのか。
あの彼女はズルっちいですよね。
自分は「保険」をかけておいて、飽きるまでの恋愛を繰り返しているんです(←勝手な妄想)
でも、付き合う前の忠告に「タフだから大丈夫」などと聞く耳持たなかった主人公も自業自得だと思いますがね。

それでも主人公を肯定したい。
心が障子紙のようにヤワだったとしても、何度も嫌なことを経験して人はタフネスを身につけていくと思うから。
良いじゃないの。
親友にハグしてもらい、抜群の改造車を転がす。
そして、ソードオフショットガンをぶっ放し、火炎放射器の炎に魅入る、そんなボンクラな毎日も。
トイレで吐くほどの失恋だって、来年のクリスマスあたりには忘れているだろうし、もしかしたら何の間違いか世紀末的世界がついにやってくるかもしれない。
そうなれば、ガソリンや水の奪い合いが、彼女を過去にかえてゆくでしょう。
な〜んてね。


車検で絶対にひっかかりそうな「メデューサ号」ですが、とにかく黒くて格好良いので、もっと派手な走行シーンがみたかったなぁ。
コクピットもスパルタンでシブい!
これ、監督の私用車で、アメリカではお巡りさんに見つからなければ公道で火をふいても大丈夫なんだって。アホか(笑)!
もし自分が女子だったら、こんな車でナンパされたら速攻OKなんですけれどね〜!


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