<概説>
街中で迫害されているムシェットだが、彼女はそれで屈服するような少女ではなかった。彼女は瞳に強い憎悪を激らせて、ついには自身の人生における大きな決断をすることに。
<感想>
主演のナディーヌ・ノルティエの眼力が本当にすごい。
この手の映画だとだいたい主人公は最後には物憂げになったりだったり、俯きがちになって絶望を演出するものです。
しかしムシェットはそんな態度をロクに見せない。
それどころか罵倒を吐き捨てるわ、憐憫を投げ返すわでいまだ憎悪の視線を向けている。しかもその視線の力強さが冒頭のものとさして変わらないものですから、悲劇映画の筈なのに悲劇を見ている気にならない。
むしろ彼女に見るべきはある種の排他的な人間性や、その絶望から発生しうる副次的な人間力ではないかと、作品新しい見方の必要性を感じるほどでした。
そしてその必要性はラストシーンによってある程度保証されている気がするのです。
仮に本作に絶望と無力感のみが満ちていたのだとしたら、死の水面がああも美しく見えるはずがありませんから。