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愛妻物語の一のレビュー・感想・評価

愛妻物語(1951年製作の映画)
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脚本家としての下積み時代と最初の妻との死別を描く新藤兼人の自伝映画において、その妻を乙羽信子が演じるって因果が過ぎる。この時代にここまで個人的な映画が作られたことにも驚く。最後の乙羽の台詞「あなた 一生シナリオを書いてね あなたの一生はシナリオなの シナリオを書くことなの」まるで呪いだ。そして実際そうした兼人、スゴみしかない。映画業界内幕モノとしては下世話度が物足りないが、監督・滝沢修(モデルは溝口健二)に何度も何度も脚本の直しをさせられるのを、宇野重吉が監督と脚本家との「真剣勝負」と形容する兼人のアツい仕事観と、それでも本作だけは他人に監督させたくなかったという我が儘が面白い。
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