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河のinuatsuのネタバレレビュー・内容・結末

(1997年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

台北のとある一家。父親はサウナで他の男の身体を弄り、母親は浮気に走り、息子は無職で親から距離を置く。同じ家にいるのに、3人は別々の部屋に籠り、家族の繋がりはほとんどない。ところが、息子がバイクでの転倒をきっかけに首をまっすぐ伸ばしたままにすることができない原因不明の病気にかかり、父親と母親は息子の病気の治癒のために力を合わせ始める。

『愛情萬歳』でも現代の若者の性意識の歪みが描かれていたが、『河』ではそれがさらに辛辣に描かれているように思う。この作品では、性意識の歪みを抱えるのは若者だけではない。母親や父親までもそれを抱えている。

父親も母親も、性的な欲望を抱いている。しかし、それを家の中では出すことはない。性欲は人間の恥部であり、見せてはならないとでも言わんかのごとく。その捌け口は、家の外である。

首は、思考する頭と行動する身体を繋ぐものである。息子が患う原因不明の首の病気は、性欲を発散したいという考えを持ちつつも、身体ではそれを抑え付けてしまうという現代社会のちぐはぐな性意識を象徴しているかのようだ。

父親と母親は様々な治療を試みるが、どれも治癒させるには至らない。性の歪みは、外的要因によって「治療」できるものではない。根源的な性の欲望の表出を受け容れ、適切な方向で性欲の充足を行うことが、この原因不明の「病」を根絶する唯一の道なのだ。
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