このレビューはネタバレを含みます
初めてのツァイ・ミンリャン監督。すごく独特な間と雰囲気が構築された世界観で訳もわからず引き込まれた。
死体役をしたことによって、首が痛くなってしまう主人公。サウナで若い男といる父親、不倫相手のいる母親。そんな既に家族崩壊している主人公家族が描かれていく。
最初から家の中ではそれぞれの部屋のシーンが多用されていて、全員で食事をすることがない。血の通っていない無機質なリビングと、それぞれを表す部屋。その壁が人との断絶と家族としてのつながりのなさへと繋がっているような気がした。
家族の中ですら、それぞれ発生する孤独。そしてその闇の深さがエゲツナイ結末へと繋がってしまう。終始不穏な雰囲気から最後には納得。ここまでの物語にするとは。主人公はきっと飛び降りることを選ぶような気がした。
前半の主人公の頭支えてバイクに一緒に乗るシーンとか笑っていいのか?と受け取り方がわからない笑いのシーンがいくつかあった。こんな怖い雰囲気の中で笑い?と言う変な映画だった。けど、最後のサウナの扉のシーンとか本当に唾飲むような怖さがあって、雰囲気作りへのこだわりを強く感じたからこそ引き込まれたのだと思った。
監督の独自性がある人が好きだから観られて良かった。父親の部屋の雨漏れから水が家に流れ込んでしまうシーン。夢に出てきそうで怖いし、水は何を表しているのか不思議だった。