Jin

カポーティのJinのレビュー・感想・評価

カポーティ(2005年製作の映画)
3.1
“彼らを救うために何も出来なかった。”
“実を言えば、救いたくなかったのよ。”


小説「ティファニーで朝食を」で有名な作家トルーマン・カポーティが、「ノンフィクション・ノベル」というジャンルを開発し、小説「冷血」を書き上げるまでの実話。

アメリカの一家4人が惨殺された事件に目をつけたカポーティが、犯人の死刑囚と直接対話する中で心を通わせていく。早く死を見届けて小説を完成させたい心と、死刑囚との間に生まれてしまった友情に苦しむ物語。早く殺されてほしいが、死んでほしくない。


この映画は、そもそも「トルーマン・カポーティ」の魅力を知らないと難しい。舌足らずな話し方や、当時は珍しい公表したゲイであること、小太りの成金趣味…。
この癖のあるカポーティの物語だということを知っておく必要がある。


変わり者だからこそ経験した幼き頃の苦労から、母親に捨てられた過去を持つ死刑囚に共感していく。
”同じ家に生まれ、正面玄関から出て行ったのが自分で、裏口から出て行ったのが彼だ”
だからこそ生まれる信用と、「相手が何を考えているかお互いわかっている」やりとりは非常に面白かった。「嘘をつかれているとわかっている表情」の細かさがすごい。


映画としては、予想よりずっと重かった。
おそらく、白黒映画ではないものの白黒で統一された色味が、その重さを作り出していると思う。

この映画でアカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンの演技は確かによかった。動きの機微や話し方、表情全てが作り込まれていて、憑依しているかのようだった。


でもやっぱり、時間設定が目まぐるしく展開する上、実話だから説明がなく、難しい。カポーティに関する前情報がないと飲み込みづらい。
作り込まれた役や世界はいいけど、いきなりみると重くて事情がわからない。あんまり好きにはなれなかった。
カポーティが特殊すぎて感情移入できないのもあるのかな。
Jin

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