SANUKIAQUA

戦場のメリークリスマスのSANUKIAQUAのネタバレレビュー・内容・結末

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

未見の名作を観てみよう。

タイトルの「戦場のメリークリスマス」は
非人間性と人間性のギャップの組み合わせで
映画の舞台と季節を表しているし
キャッチーで印象に残る。
けれどもどうしても第一次世界大戦の
クリスマス休戦を想起させると思います。
観終わるとタイトルは原題どおりが
しっくりくるなと思いました。

映画はわかりやすく極限の戦時下を
舞台としていますが
置かれた社会や状況、役割などにより
本来の人間性や考えなどが
抑圧されたり自ら抑制したり
というのは今の社会でも変わらないなと
思いました。
人は簡単に置かれた状況や立場で
変わってしまうし、変わらされてしまう。
そして本来の人間性や愛、
優しさや勇気が抑圧される。
恐ろしいことです。

冒頭の日本兵とオランダ兵の関係から
その命の失い方からして
ヨノイ大尉がセリアズに一目で
惹かれてしまったことを
悟られることの危うさがわかるし
彼の戸惑いと自身の気持ちを
精一杯表したであろう
断髪のシーンは切なかった。
時代や立場が違えば2人は
どうなっていただろうか。

セリアズに対するヨノイ大尉の気持ちは
わかりやすいけれど
僕はローレンスも人間的に何故か
ハラに惹かれていたんだと思いました。
それはハラも同じだったと。

日本がまだ東南アジア戦線で
優位に立っていた時代から
日本が敗戦した翌年に時代が移り
立場が逆転したローレンスと
ハラの和やかなやりとりは
それまでの有様が効いているし
本来2人が平和に出会えていたら
こんな感じのいい友人になれたんだろうな
と感じてしまって哀しかったな。
その2人が話してる監獄内に
ガが飛んでるんだけど
これは偶然映りこんだのではない
と思いました。
セリアズが亡くなった時、
彼の側にガが1匹寄り添っていたから。
調べてみると白い蛾は
死の象徴らしい。
夢に見ると幸運とも…

セリアズが抱えていた後悔。
首まで埋められた彼のために
捕虜仲間が皆で歌う様子と
セリアズが見捨てて
学校で晒し者にされている
彼の弟の様子が対比となり
なんて悲惨な贖罪なんだと思いました。
しかし彼の魂が救われている様子も
描かれており、それは救いでした。

日本人の僕はつい日本兵側として
見る傾向が強かったと思うけれど
それでも何かにつけてすぐ責任を
ハラキリで片をつけようというのは
本当にクレイジーだと思いました。
ただそれがずっと日本人男性の美学
だったんですよね。
海外の方にはハラキリや斬首のシーンは
それはショッキングだったことと思います。
日本兵による数々の
残虐な言動があるからこそ
最後のローレンスとハラの会話が
効いてくるのだと思うし、
映画のタイトルにもなっている
ハラのセリフと演じる北野武さんの
邪気のない笑顔が別のショックを
観る者に与えるのだと思いました。
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