さめむね

戦場のメリークリスマスのさめむねのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.5
大島渚著『戦後50年、映画100年』を読みながらつらつら。

大島渚は自著で「日本の戦争映画は敵を描いていない」と指摘しています(1999年)。だからこそ、戦メリでは捕虜という形で敵の姿を描いた。

一見日本軍と捕虜(東洋人と西洋人)で、文化や宗教、言語の対立を描いているが、その実ヨノイとセリアズ、ハラとローレンスは「日本軍」「捕虜」ではなく個人として描かれている。
例えばヨノイは勝者側でそれなりの立場なのに、日本語ではなく英語を用いて捕虜に話しかけている。これはヨノイが英語が達者というだけでなく、彼の人柄ゆえだろう。

個人だと冗談を言い合ったり想いやりあったりできるのに、「戦争」となると、勝者と敗者にカテゴライズされてしまう。
戦闘描写のない戦争映画である戦メリでは、戦争がこのような形で描かれている。
戦争映画で敵を描くにあたり、敵の人生(本作ではセリアズの人生)をまるごと描くのはかなり面白い点と言えるだろう。

有名曲「メリークリスマス、ミスターローレンス」も鳥肌モノだが、「種を蒔く」という曲がめちゃめちゃ鳥肌がたって興奮した。
種というのはセリアズのことかな……。
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