明石です

カルメンという名の女の明石ですのレビュー・感想・評価

カルメンという名の女(1983年製作の映画)
4.6
バイオリンの演奏をバックに優雅に殺し合い愛し合う凶暴な男女の話。映画なのか純愛なのかあるいは純愛映画なのか。とりあえず凶暴な純愛ではあった。どことなくイザベル・アジャーニ風の、あどけなさを残しつつ華やかさもある美しすぎヒロイン、カルメンに目を奪われっぱなしでした。私が見たのはヘア解禁版というやつだったので、そちらの意味でもドキドキしたね。

忘れ物だよマドモアゼル、と言って渡された封筒の中から薔薇の花が出てくるという小憎らしい演出はどうでしょうか。野獣じみてると思えば、嫌に洗練されているところあったりするこの感じ。そしてシャンソンとバイオリンの音色に釣り込まれて、素敵な映画だあ、と思っていたらしっかりと血生臭いこの感じ。ベルリン国際映画祭は深淵な(ややもすれば支離滅裂の一歩手前な)映画を好むというのがわかったかも笑。

ゴダールの映画は、話すべきことはもう全て話したわ!と毅然として言う女性に対し、何ひとつ分かってない男という、ある種の女性の神秘をずっと描き続けてる気がする。1本通して見終えた後でもカルメンの本性が殆ど見えてこないのだから本作の神秘も筋金入り。もちろん好きか嫌いかで言えば大好きだけどね。今まで見てきたゴダール映画の中で一番好きまである。

——好きな台詞
「ゴッホは黄色を探した。太陽が沈んでから探すべきだったのに」

「美しさは我々が耐えるべき恐怖の始まり」

「全てが台無しに終わっても陽が登れば息ができる」
明石です

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