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ノッティングヒルの恋人のMUAのレビュー・感想・評価

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)
4.3
2回目鑑賞。
一貫して紳士的なイメージの主人公ウィリアムだが、その潜在意識的要素は彼らの周りの友人が担ってる印象。
・同居人のスパイク…主人公の本能的欲求を担当。男性としての性欲をベースに、アナとの親密な関係を周囲に言いふらしてしまいたい欲求、妹への純粋な愛情、後半はアナへの態度に対する過ちを一番早く且つ率直に表す。それが同居人=表皮一体という設定はお見事。
(あとは感じた印象だけど…↓)
・友人ベラ(車椅子)…人生の根底に根付く不幸感、不平等感。アナへの純粋な愛が社会ステータス的に実らない事への不満感も含まれる印象
・友人バーニー(証券会社)…仕事とお金に偏る人生。主人公の社会で生きる強い男性的イメージ(理想)としての登場か。恋愛要素はなく、主人公の社会であるべき普遍的な男性像が見える印象。
・ハニー(妹)…雰囲気からして同居人スパイクとそっくり。主人公が「紳士」的イメージから外れて無邪気に生きてみたい、という本能的欲求をそのまま引き継いだ印象。且つ同性ではなく女性である+年下という設定だからこそ敵対視せず愛情を注ぐ事が出来るのではないか。
・マックス(ベラの夫)…これは難しいが、元恋人のベラの夫という設定はどこかしら主人公の傷を象徴していないだろうか。それでも絆を大切にする深い愛情と義理の反面、離婚歴も含めて「人間不信」も隠されている印象。→実際、アナに対してこれ以上傷つきたくない、と言い放つシーンもある。

こう見るとインサイドヘッドみたいな感じで主人公の顕在的・潜在的欲求や心情を汲み取ることが出来るイメージ。軽やかかつロマンティックでコミカルなラブロマンスではあるものの、恐らく主人公の人生に対するこれまでの諦念感や人間不信などは思っているよりも深いかと。階級意識の強い英国であるというのもキーになりそうだが、その中で(これまた英国ではなくアメリカ、というキーにも加え)「アナ」という社会的頂点(=大スター)であり女性(=男性的欲求の全てを補填できるもの)を望んでいる、という点を踏まえると主人公は人生に対して相当なリベンジ意識を持っている、という見方をしても面白いのかも知れない。
もちろん過激的な見方なので全然間違っていてもOKなんだけど、そう見ると労働者としての意識(しかも旅行書専門店。旅=人生の休暇、悪く見ると現実逃避とも捉えられる)もいろいろ考えたりできて面白かった。
そんなごちゃごちゃしたこと考えなくても最高に面白い映画でした!!!
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