竜平

魔女の宅急便の竜平のレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.5
13歳になると独り立ちしなければいけない、という魔女の古いしきたりに倣い故郷を離れることになる女の子「キキ」の、都会の街での仕事や様々な人との交流、成長の姿を描く。

ジブリの宮崎駿作品としては初となる原作モノ、なんだけど原作からいろいろと変更があるとのこと。簡単に言うと原作はファンタジー路線なのに対して、このアニメ映画版ではわりと現実味を推した作風になってるんだとか。健気で好奇心に溢れていて、でも未熟さも見える主人公キキ。そもそも「魔女ってのがいる」くらいの感じで世間に認知されてる世界観は今見るとなんかおもしろい、これもアニメ映画化で際立った部分なのかも。ファンタジーと現実味のあんばいね、良き。今作ではティーンエイジャーが世に出るということ、例えば仕事の大変さ、そこで育む人間関係など、若者と社会の有り様やそこにある厳しさというのが顕著に描かれている印象。いやはや、今作を見てると学生時代のアルバイトとか思い出しちゃうんだよね。あと宅配エピソードがね、あれもこれも胸にくるというか。素っ気ない人、態度わるい人、親切な人、いろんな人がいるよねーなんて。

魔女、というかキキに興味を持つメガネの男の子「トンボ」に、どうやらキキとだけ喋れる黒猫の「ジジ」など、これまたみんないいキャラしてる。てか初めはチャラそうなトンボなんだけどじつは嫌なやつでは決してないし、そんな彼の内面というか人間性に触れてキキも接し方が変わったりして、ここらへんも日常的で現実味に溢れてるなと。あと大らかな性格で知り合いもたくさんのトンボと、わりと一人ぼっちのキキ、この対比もちょいちょい効いてる気がする。途中でジジの言葉がわからなくなって、ホウキで飛ぶこともできなくなって、んーこの原因ってのはやっぱり「恋」なのかなーどうなのかなー。ここらへんも作中でそこまで言及してこないあたり宮崎駿の節だよねっと。

大人の階段を上る少女の成長の物語、いつ見てもやっぱりグッとくるし、時に心をギュッと摘まれる、そんな一本。キキと絵描きの女性は同じ声優なんだね、コナンの人。はい声優に疎い俺でしたチャンチャン。
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