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リトアニアへの旅の追憶のdojiのネタバレレビュー・内容・結末

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

3つパートに分かれた撮影の時期はばらばらとはいえ、フィルム映画という媒体そのものに焼き付けられていることをそのまま映画としてまとめ上げているところに、1972年の映画ということを忘れてしまう不思議な感覚になった。個人的であり、あまりに小さな瞬間の断片が、始終編集でつながれ続けている。それはフィルムでしかおこりえない映画という現象でもあって、カメラの前に映る被写体たちも、映られることにずっと意識的で、こちらに笑いかけ続け、ポーズをとり続けている。リトアニアの田園で農作業をする姿ははっきり写ることを意識したみなりとしぐさだし、集める家族たちも、カメラの存在をずっと意識している。はじめはそのことがすこし違和感で、超然と料理をしたり家事をこなすママの姿だけがかざらない被写体の魅力にあふれていて(もちろん猫も)、そちらに惹きつけられていたのだけれど、逆説的にこれを映しているジョナス・メカスがいかに愛のある視線を送られ続けているのかに気がつくと、あたたかい気持ちになってくるのが不思議だった。当然背景には戦争があり、小さな暮らしを映すことへの意志がないとこんな映画も生まれなかったのだなと思うと、いろんな感情や忘れていたじぶんの記憶も蘇ってきて、家に帰ってきてからうとうと眠ってしまった夢の中に映画が混ざり込んできた。
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