賽の河原

秋刀魚の味の賽の河原のレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.2
面白かった。すごく良かった。
何がいいんだろう。まだ捉えきれてないですけど、まずはやっぱり時代感とか言葉遣いとか美しいですよね。「ALWAYS」と比べちゃ当然乱暴でしょうけど、地に足のついた感じというか。戦争という記憶が今と断絶していないで自然に連続している感じだとか。今後の世代には描けないんじゃないかな。
日本語の美しさもねえ。棒読みの違和感という声もありますが、僕は逆に作為的な言葉の発音が味を出していていいなと。
もちろんPC的に時代遅れな部分はあるんだけれども、それでも終始貫徹して描かれている強い女性たち。そしてテーマとしての孤独やすれ違いの質感の確かさ。
カメラの位置も面白いですよね。場の一角に固定されたカメラが人物だけでなく場全体を映し出すことでどこか寂しさや無常な感じを演出している。カットの割り方も然り。特徴的、なんなら少し変なんだけど、それが全然ノイズにならないしむしろ中盤以降気持ちよくなってくるという。
ジョークもキレキレ。ブラックジョークは勿論、すれ違いが生む笑いといいニヤリとさせられちゃう。
話は平板なんだけれど美しいし、退屈もしない。上質なお話でした。
賽の河原

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